Eno.563 ホバリングウミガメハイカー 『甲羅と共にあれ』 - はじまりの場所
冒険者たちによりグランドマスターシェルのもとへ、ひかりの森の各地から集められた空藻が届けられ。
目をさました巨大貝からはさしたる情報は得られなかったが──
近隣のシェルの情報が記録されている、とのことだった。
これを足掛かりに近隣諸島のシェルを探すことはできそうだが、
今回はひとまず切り上げ……ということに、なりそうだ。
「──んむ。ボウケンシャ総出、巨大貝 にモーニングお届け作戦は
ひとまず成果を収めたってところかな」
「休眠中の巨大貝に空藻がイケる って実績と──」
「《空藻の生育地は大体ヤバい》《空藻いっぱい持って歩くのもヤバい》
って事実がわかったのは、収穫じゃない?」
「後は次に来るボウケンシャに任せるけど。
私たちがヒイヒイ言いながら持ち帰った情報、ちゃんと活かしてほしいね」
「──次に来たボウケンシャを詳しい説明もなく
放り込むなんてことはしてくれるなよォ~…??」
* ホミガメさん回想中…… *
打ち上げられて今にも力尽きようとしていたそれにとっては、余命にすれば数分そこら違いだったかもしれない。
それでも見過ごすのは違うと思ったわけだ、そのときは。
拙い魔法の火をふりまわしてようやっと追い払った連中は通りすがりのワルガキだったのか、
本職の密猟者だったかももう定かではない。
いま冷静に思いかえせば、わからない話じゃない。気の毒なカメさんにとっちゃ同類項だったのだろう。
まあ喋り出した時点で大分びっくりはしたのだが、今となっては 、だ。
*────人間、*
*そんなに甲羅が欲しいのか*
「はっ?えっ?いや、私は違」
*欲しいのなら*
*一生背負っているがいい!*
「待って待って待ってあんたボケてん」
*カァーーーッ誰がじゃボケとらんわこのクソ裸猿!!*
*ああ~~カメに生まれてカクカクシカジカ幾星霜、若い頃に随分ヤンチャしてマルマルウシウシ幾星霜、*
*霊亀と呼ばれるまで永らえるのにもツルツルカメカメ幾星霜────!!*
*最後の最後にこのトシヨリを囲んで暴行のあげくボケとか言われると思わなんだわ!*
*許さん許さん絶対許さん昔はガラの悪かった儂も穏やかに迎えられるはずだった晩節を汚しくさってこの、*
*お前ホント絶対許さんからな一生甲羅はがされる恐怖に怯えとれ!! これから死ぬまで、*
*甲 羅 と 共 に あ れ ! *
* ボ ン ッ *
「────ッッッ!?」
「───するもんじゃなかったかなァ、カメ助けなんて。
助けて損するくらいなら、もう一生カメなんか……!」
「……なんてね。
思えばこの島じゃ随分カメ助けしてもらったもんだ」
「たまにそういう事もあるだろうけど、
ちゃんと報いもあるってコト──」
ぼんやり眺めていた金色の鱗を胸ポケットにしまうと、
いまわしきその下半身を、いつかされたようにひと撫でして。
「『ホミガメさんをまもってあげてね』だってよ。
……頼むよ~?」
「じゃなきゃ最悪、怪奇ホバリングウミガメ女として人間に化けれるほどのモンに
成り果てるまでよろしく、か」
「……今回は、島にいる間いい子にしてただけでも上出来かなァ~……」
「(荷台に乗ってる)」
「──で、お前はついてくんのかい」
「──ま、いいや。
たまにはお前の里帰りって事で、
いつかまた来る口実にもなるでしょ。
いい所だったし、またそのうちね」
ふわり、高度をあげる。
*ボッ*
「ひとまずは、あばよ空島。
んでもってまだまだ当分は、
甲羅と共にあれ───だ」
*ボボボボボボボボ*
「やっぱツノは撫でさせてもらっときゃよかったかな~ ~ … … !」
*シュゴォォォォォキィィーーーーーーー ー ン … … *
目をさました巨大貝からはさしたる情報は得られなかったが──
近隣のシェルの情報が記録されている、とのことだった。
これを足掛かりに近隣諸島のシェルを探すことはできそうだが、
今回はひとまず切り上げ……ということに、なりそうだ。
「──んむ。ボウケンシャ総出、巨大
ひとまず成果を収めたってところかな」
「休眠中の巨大貝に空藻が
「《空藻の生育地は大体ヤバい》《空藻いっぱい持って歩くのもヤバい》
って事実がわかったのは、収穫じゃない?」
「後は次に来るボウケンシャに任せるけど。
私たちがヒイヒイ言いながら持ち帰った情報、ちゃんと活かしてほしいね」
「──次に来たボウケンシャを詳しい説明もなく
放り込むなんてことはしてくれるなよォ~…??」
* ホミガメさん回想中…… *
打ち上げられて今にも力尽きようとしていたそれにとっては、余命にすれば数分そこら違いだったかもしれない。
それでも見過ごすのは違うと思ったわけだ、そのときは。
拙い魔法の火をふりまわしてようやっと追い払った連中は通りすがりのワルガキだったのか、
本職の密猟者だったかももう定かではない。
いま冷静に思いかえせば、わからない話じゃない。気の毒なカメさんにとっちゃ同類項だったのだろう。
まあ喋り出した時点で大分びっくりはしたのだが、
*────人間、*
*そんなに甲羅が欲しいのか*
「はっ?えっ?いや、私は違」
*欲しいのなら*
*一生背負っているがいい!*
「待って待って待ってあんたボケてん」
*カァーーーッ誰がじゃボケとらんわこのクソ裸猿!!*
*ああ~~カメに生まれてカクカクシカジカ幾星霜、若い頃に随分ヤンチャしてマルマルウシウシ幾星霜、*
*霊亀と呼ばれるまで永らえるのにもツルツルカメカメ幾星霜────!!*
*最後の最後にこのトシヨリを囲んで暴行のあげくボケとか言われると思わなんだわ!*
*許さん許さん絶対許さん昔はガラの悪かった儂も穏やかに迎えられるはずだった晩節を汚しくさってこの、*
*お前ホント絶対許さんからな一生甲羅はがされる恐怖に怯えとれ!! これから死ぬまで、*
*
* ボ ン ッ *
「────ッッッ!?」
「───するもんじゃなかったかなァ、カメ助けなんて。
助けて損するくらいなら、もう一生カメなんか……!」
「……なんてね。
思えばこの島じゃ随分カメ助けしてもらったもんだ」
「たまにそういう事もあるだろうけど、
ちゃんと報いもあるってコト──」
ぼんやり眺めていた金色の鱗を胸ポケットにしまうと、
いまわしきその下半身を、いつかされたようにひと撫でして。
「『ホミガメさんをまもってあげてね』だってよ。
……頼むよ~?」
「じゃなきゃ最悪、怪奇ホバリングウミガメ女として人間に化けれるほどのモンに
成り果てるまでよろしく、か」
「……今回は、島にいる間いい子にしてただけでも上出来かなァ~……」
「(荷台に乗ってる)」
「──で、お前はついてくんのかい」
「──ま、いいや。
たまにはお前の里帰りって事で、
いつかまた来る口実にもなるでしょ。
いい所だったし、またそのうちね」
ふわり、高度をあげる。
*ボッ*
「ひとまずは、あばよ空島。
んでもってまだまだ当分は、
甲羅と共にあれ───だ」
*ボボボボボボボボ*
「やっぱツノは撫でさせてもらっときゃよかったかな~ ~ … … !」
*シュゴォォォォォキィィーーーーーーー ー ン … … *