Eno.5 鳴神 いつかの通信 - たそがれの頂
音声
「……あ、もしもし。雷神サマ?」
「……あ、もしもし。雷神サマ?」
冬嵐
「もうひとつだけね。言い忘れてたんだけど────」
「もうひとつだけね。言い忘れてたんだけど────」
あの後暫くして、風神からもう一度通信が入った。
鳴神
「何だ。」
「何だ。」
嫌な予感がした。
こいつには何も話していないのに、まるで己の考えを見透かされているような。
ルロキルのために危ない橋を渡ろうとしているところを、
大切な約束を、阻止されてしまうような────
冬嵐
「な……なんと!
僕らの街の方で、明日からとんでもない嵐らしいよ!!」
「な……なんと!
僕らの街の方で、明日からとんでもない嵐らしいよ!!」
鳴神
「…………え?」
「…………え?」
冬嵐
「いや~、すごいな~。
偶然そんなに天候が荒れるなら、雷のエネルギーを回収し放題だな~。
僕が集めて雷神サマのところに繋げば、何かすごい事に使えるかもな~。」
「いや~、すごいな~。
偶然そんなに天候が荒れるなら、雷のエネルギーを回収し放題だな~。
僕が集めて雷神サマのところに繋げば、何かすごい事に使えるかもな~。」
……これは。
見透かされている、というよりは。
鳴神
「お前……。
庭園での私の様子、見てたのか。」
「お前……。
庭園での私の様子、見てたのか。」
冬嵐
「何のこと!?全っ然見てないよ!
そういうわけで、明日になったら遠隔でそっち にエネルギー送るから。
大事に使いなよ!じゃあね~。」
「何のこと!?全っ然見てないよ!
そういうわけで、明日になったら遠隔で
大事に使いなよ!じゃあね~。」
…… ……
そんなこんなで、話は現在に至る。
本来であれば、
別世界から法則を引っ張ってきた上で、一人の人間のカタチを変える、なんて大業は。
もし成功したとしても、何らかの代償が伴うはずだった。
それが、計画を実行するにあたって思い浮かんだ、三つ目の問題点。
私はそれでもいいから、己の存在をかけてルロキルの未来を守りたかった。
手を握った瞬間に決めた覚悟は、そのレベルに値するものだったのだ。
けれど。
私は今、奇跡的に無傷で地面に立っている。
鳴神
「それはそれとして風神 はプライバシーの侵害で処す。」
「それはそれとして
詳しい話は街に帰ってからすれば良い。
今は、残された時間で。
庭園の頂でのんびりと過ごそうと思う。