Eno.5 鳴神  いつかの通信 - たそがれの頂

音声
「……あ、もしもし。雷神サマ?」

冬嵐
「もうひとつだけね。言い忘れてたんだけど────」


あの後暫くして、風神からもう一度通信が入った。

鳴神
「何だ。」


嫌な予感がした。
こいつには何も話していないのに、まるで己の考えを見透かされているような。

ルロキルのために危ない橋を渡ろうとしているところを、
大切な約束を、阻止されてしまうような────

冬嵐
「な……なんと!
 僕らの街の方で、明日からとんでもない嵐らしいよ!!


鳴神
「…………え?

冬嵐
「いや~、すごいな~。
 偶然そんなに天候が荒れるなら、雷のエネルギーを回収し放題だな~。
 僕が集めて雷神サマのところに繋げば、何かすごい事に使えるかもな~。」


……これは。
見透かされている、というよりは。

鳴神
「お前……。
 庭園での私の様子、見てたのか。」

冬嵐
何のこと!?全っ然見てないよ!
 そういうわけで、明日になったら遠隔でそっちソラニワにエネルギー送るから。
 大事に使いなよ!じゃあね~。」



…… ……


そんなこんなで、話は現在に至る。


本来であれば、
別世界から法則を引っ張ってきた上で、一人の人間のカタチを変える、なんて大業は。
もし成功したとしても、何らかの代償が伴うはずだった。

それが、計画を実行するにあたって思い浮かんだ、三つ目の問題点。

私はそれでもいいから、己の存在をかけてルロキルの未来を守りたかった。
手を握った瞬間に決めた覚悟は、そのレベルに値するものだったのだ。


けれど。

どこか遠くの空・・・・・・・からの思いもよらぬ支援によって、負荷が減ったのだろう。
私は今、奇跡的に無傷で地面に立っている。

鳴神
「それはそれとして風神あいつはプライバシーの侵害で処す。」


詳しい話は街に帰ってからすれば良い。

今は、残された時間で。
庭園の頂でのんびりと過ごそうと思う。








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