Eno.445 アラビク・ハン  【献身】、【矜持】、ではなく【欲心】 星を天秤に載せるもの - あざやかな花園

命は星よりも重い。そんな言葉がある。
文明の進んだ世界でしばしば語られる言葉だ。実のところ、それは心がまえの問題であって、
実際には何千万、何億の命を支える星と、その何千万分の一、何億分の一の命が等価なわけはない。
であるから、実際には個人の都合で世界が脅かされることはあってはならない。

ならないのだが。

だからって、世界のために犠牲になれとわめくやからも、わかりましたとうなずくやつらも大嫌いだ。

ああまったく、腹が立つ。
世界がなんだ。滅亡だの破滅だのがなんだ。今の暮らしがそんなに大事なら、自分たちでなんとかしろ。
自分の知らないところで誰かがなんとかしてくれる、そんな都合のいい話があるわけがないのに。
それに応えるやつらもやつらだ。なんで、そんな××どものために身を削る必要がある。

なんで、……いいやつばかりが損をしないといけない。


チョーカーに込められた、思いを伝えられた。幼いけれど、真摯な願いを俺は知った。
俺がそれに応えられるとは思わないけれども、
それでも、その願い、想いは尊ぶべき、かがやかしいものだと思う。
誰もがそうした願いを持っていていいと、そう思う。


なら。


なんで。


その気持ちよりも、『みんなのしあわせ』とやらを。
星だの世界だのの運命とやらを優先させる必要がある……!


ああまったく、腹が立つ。腹が立つことこの上ない。
そうか、そうか。俺は星の管理者とやらより下か。

舐められたもんだな、お姫様。
勝手に家出してきて、勝手に惚れて、勝手にふられた気になって。
あげくに勝手に別の男の嫁になった?それが世界のため?わけがわからん。
ただの逃げ、あてつけだろうが。

箱入りお嬢のおクソガキ様に興味はなかったが、事情が変わった。
こうなりゃ意地でも引きずり出してやる。
いいだろう、『みんなのしあわせ』とやらもなんもかんも、俺がどうにかしてやろうじゃないか。
あんたの言い訳のぜんぶを、叩き潰してやろうじゃないか。
そうして、なんでもないただの一人の子供になって。
それから、ただの一人の子供らしい生き方をすればいいさ。


さて、というわけでだ。俺は星を越える存在にならにゃならんことになった。
だってそうだろう、相手が星ならそれ以上にならないといけない。
星の管理者とやらも、管理対象の星がどうにかなりそうなら直談判しに来ずにはいられまいよ。
まったくもって、結局は力だな!
とりあえず、星間文明の世界でも行ってみるとするか……!


おい、聞こえるかいお姫様、ふるるお嬢さん、おクソガキのふるるちゃん。
自分のチョーカーにつけた、薔薇の首飾りにそう語りかける。


星を越えて、迎えに行くからな。
パンケーキとカフェオレをたっぷりおごってやるから、


――覚悟してやがれ。


→to be continued to “Supernal Blue”...

(Eno.472 ふるる様 Special Thanks!!)








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