Eno.368 キャリー  ミーシャへ - はじまりの場所



──ミーシャへ

ふふふ、手紙を見つけてしまいましたか?
見つけてしまいましたねぇ
お元気にしていますか、とっても可愛いセイレーンですよ

貴方との出会いは…
初期位置あの場所でぼんやりとしていた時に声をかけて頂いたのがきっかけでしたでしょうか
冗談半分でパンを下さいと無茶振りをしましたが、爆速でパンが飛んできてびっくりしました
あの頃の貴方は淡々とした印象でしたので、まさかお相手をして頂けるとは思ってもいなかったのです
見かけで判断してごめんなさいでした
あと、パンは美味しく頂きました

ここを発つ前の貴方は心なしか感情が豊かになったような気が致しました
キャリーは旅の終わりにパンを手に入れましたが、貴方も大切な何かを得られたのでしょうね
表情の変化は…相変わらずでしたが、ふふふ…

次にお会いする機会がありましたら、その時は笑い茸を持参しますのでね
絶対に笑わせてみますのでね!
震えながらその時を待つといいです

あ、でもミーシャは毒使いでしたね…笑い茸、効きますかね?
おかしいですね、キャリーの方が心配になってきました…






よく見るとうっすらと文字が見える…
思い返してみればキャリーはミーシャのことを何も知りませんでしたが、
実はあの地で貴方の主と思わしき人物と邂逅していました
彼は良い方ですね…得体の知れないキャリーを撫でるだけでなく、対話をして頂けました

彼は貴方のことをそれはそれは大事に育てていると仰っていましたよ
貴方の忠誠心の強さは、彼の優しさの所以だったのですね
ちょっと羨ましいなと思ったのは、ここだけの話です

ふふふ…
羨ましいな、と思ってしまい…
キャリーは彼を深海へと引き摺り込もうとしてしまいました

今となっては何故そのような愚かなことを企てたのか、と反省しています
…が、彼は謝罪をする前にこの地を去りました
人とは酷な生き物ですよね…いつも勝手にいなくなってしまう

今回の件はキャリーが全面的に悪!なのですけどね

彼はキャリーに世界を渡れるなら自分の世界に遊びに来るといいと言いましたが、
キャリーは強欲で傲慢なセイレーンですので
行こうと思えば、行けるのですが、その時に冷静な判断ができるとは限りませんので
彼の地の名は聞きませんでした
同時に彼の名を聞くこともありませんでした

キャリーは幼くともセイレーンですので
普段は海の上にいます
その名を呼べば海を渡って、キャリーの元へ吸い寄せてしまう引きずり込んでしまう
遠路を泳げる者、または空を飛べる者以外は、死を招きます
ですので、お伺いは しませんでした

なので、彼にお会いする術は もうありません
…もう、お会いできませんので、鳩が反省していた、とだけお伝え下さると幸いです

ふふふ、最後も無茶振りで終わってしまいましたね!
パンの時と一緒です
面倒でしたら手紙なんて見ていないことにすればよいのです
届くかどうかも定かではありませんのでね!

この手紙が届かずとも、キャリーは二人の幸せを願っていますよ!
キャリーは平和の象徴、白い鳩でもありますから、ね










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