
Eno.125 食肉世界オブスキュラ ろくでなしに捧ぐ - くらやみの森
約束からずっと先。
空間転移を使って君が連れてくれた、憧れていた海。
「波の音がする、」
想像より遥かに青が広がり続けている。地上にはこんなに綺麗なものがあるなんて!
水面がキラキラ輝いていて沢山の宝石が散りばめられているみたいだ。
海の近くはしょっぱい匂いがずっとする。初めて知った匂い。
手袋を外して、絶え間なく引いては押し寄せるさざ波に手を伸ばす。
ひんやりと冷たく心地よい感覚が伝わる。怖い冷たさじゃないのが新鮮だった。
青いのに手で掬うと透明。澄み切っている、憧れた色。羨んだ色。
それが手の中、隙間から零れ落ちていく。
その光景すら美しい。
水平線を見つめる。
ここにクジラはいない。でもオブスキュラと違って広い海がある。
あぁ、本当に俺はあの世界から──、
「─…、」
綺麗だった海が歪んで見える、どんどん空と海の境界も曖昧になるくらいに混ざり合う。
青い瞳から溢れていく。海が、神様から分け与えられた海が。還りたがっている。
この感覚は悲しい事じゃなくて、むしろ──。
「ジオ、」

「海を見せてくれてありがとう!」
俺の海は目の前の海と同じで綺麗だったのかなぁ。そうだと良いな。
4年と少しが経ったある日。
マルルーは出かけてくると一言伝えてから外へ出た。
普段帰ってくるような時間になっても戻る気配はなく。
これは君が見つけるまでの時間。
「まだ気づいてないといいな」
「死ぬまでもう少し時間かかるだろうし、まだやる事も…」
手袋はもうない。もういらない。
小型ナイフを取り出し早鐘を打つ鼓動を鎮めるように深呼吸。
「…大丈夫、痛いとか言ってられない、やるべき事があるんだから」
歯を食いしばり激痛の波に抗う。ナイフを動かし皮膚を抉る。
「ぃ゛、う、ぐ…あ゛ッ…!」
カチン、カチン、と鉄の音がいくつか響くと血濡れのナイフを投げ捨てた。
「はぁっ、はぁっ……、こ、れで…準備できた、次が…本番…」
「…怖くないわけがない、」
「でも、」
「やっと嫌がらせが完成するから…」
「成功するといいな」
君は浜辺にある木の下で横になっているマルルーの姿を見つけるだろう。
近くには小さなピアスがいくつか落ちており、よく見れば左手の小指がない 。
再生能力があると言っていたはずが指の再生はしていない。それもそのはず。
だって血だらけの手にはピアスが全てないのだから─!
愛猫は静かに眠っている。
空間転移を使って君が連れてくれた、憧れていた海。

「波の音がする、」
想像より遥かに青が広がり続けている。地上にはこんなに綺麗なものがあるなんて!
水面がキラキラ輝いていて沢山の宝石が散りばめられているみたいだ。
海の近くはしょっぱい匂いがずっとする。初めて知った匂い。

マルルー
「折角なんだからジオも近くに来なよ!」
「折角なんだからジオも近くに来なよ!」
手袋を外して、絶え間なく引いては押し寄せるさざ波に手を伸ばす。
ひんやりと冷たく心地よい感覚が伝わる。怖い冷たさじゃないのが新鮮だった。

マルルー
「本当に海なんだ、これが…」
「本当に海なんだ、これが…」
青いのに手で掬うと透明。澄み切っている、憧れた色。羨んだ色。
それが手の中、隙間から零れ落ちていく。
その光景すら美しい。

マルルー
「知ってる?クジラの涙が海になるんだよ」
「知ってる?クジラの涙が海になるんだよ」

マルルー
「で、クジラが跳ねると雨が降るんだってさ!」
「で、クジラが跳ねると雨が降るんだってさ!」

マルルー
「この世界でも同じなのかなぁ」
「この世界でも同じなのかなぁ」
水平線を見つめる。
ここにクジラはいない。でもオブスキュラと違って広い海がある。
あぁ、本当に俺はあの世界から──、

「─…、」
綺麗だった海が歪んで見える、どんどん空と海の境界も曖昧になるくらいに混ざり合う。
青い瞳から溢れていく。海が、神様から分け与えられた海が。還りたがっている。
この感覚は悲しい事じゃなくて、むしろ──。

「ジオ、」


「海を見せてくれてありがとう!」

マルルー
「今すっごく幸せだよ」
「今すっごく幸せだよ」
俺の海は目の前の海と同じで綺麗だったのかなぁ。そうだと良いな。
4年と少しが経ったある日。
マルルーは出かけてくると一言伝えてから外へ出た。
普段帰ってくるような時間になっても戻る気配はなく。
これは君が見つけるまでの時間。

「まだ気づいてないといいな」

「死ぬまでもう少し時間かかるだろうし、まだやる事も…」
手袋はもうない。もういらない。
小型ナイフを取り出し早鐘を打つ鼓動を鎮めるように深呼吸。

「…大丈夫、痛いとか言ってられない、やるべき事があるんだから」
歯を食いしばり激痛の波に抗う。ナイフを動かし皮膚を抉る。

「ぃ゛、う、ぐ…あ゛ッ…!」
カチン、カチン、と鉄の音がいくつか響くと血濡れのナイフを投げ捨てた。

「はぁっ、はぁっ……、こ、れで…準備できた、次が…本番…」

「…怖くないわけがない、」

「でも、」

「やっと嫌がらせが完成するから…」

「成功するといいな」
君は浜辺にある木の下で横になっているマルルーの姿を見つけるだろう。
近くには小さなピアスがいくつか落ちており、よく見れば
再生能力があると言っていたはずが指の再生はしていない。それもそのはず。
だって血だらけの手にはピアスが全てないのだから─!
愛猫は静かに眠っている。