Eno.33 半分屋のグレゴリー  x:mix - まぼろしの森林



嫌いです。大嫌いなんです。




「あの時、」


怖くて怖くてしょうがなかったんです。
どうしようもなくて、どうしようも分からなかったんです。
傷つけるだけ傷つけて、傷口広げて、それで
さようなら。なんて、
そんな事しないで。

その傷を治せないで腐らせて、
でも元凶はどこにもいなくて恨みは募って。
痛くて苦しくてしょうがないのにまた何も出来なくなるって。
思って。
痛い方が良いのに。


「行かないで。離れないで。ここにいて」


仕返しが出来るように。震えずに息が出来るように。

だからこれはあなたが嫌いで、恨んでるから当然の事なのだ。
やり返せないと負けたみたいで苦しいから。願いは当たり前だった。

悪くない。正しい。間違ってない。

これ以上間違えたくも無い。し。

それに、気に入っているんだから。
唯一気に入ったものくらい、近くに置いていたって良い筈だから。



一般的にはどうやら好意を伴うその言葉を、
グレゴリーはそのままに使っているのです。
話せば話す程捻じれるだけの言語を、
ふたりは操っているのです。

ただ、それだけなのです。


──とにかく小鳥から戻されたなら、
まず最初にいつも通り不機嫌に怒りましょう。


何で軽率に口付けるんですか


あと、別に好きじゃないです、気に入ってるだけなんです、と。
話は全部それからです。









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