Eno.305 雨降る旧校舎の噂  いつかのだれかのエピローグ - めざめの平原

ざぁぁ、とその日も雨が降っていた。
曇った窓ガラスの外、変わらない鈍色の空。

外の町は、誰も歩いていなくって、
時が止まったような、そんなところ。

空間と空間の狭間のような
鏡の向こう側のような。

そんな、もう一つの学校で
リズムよく音を響かせている。

カッカッカ。

かき混ぜる音。

広い学校にただ一人、誰かが置いていく食料だとかに手を伸ばして。
ぼんやり生活を続けてる。

七不思議なんていうけれど、とっくに他の噂はどこかに消えた。
旅だったのかも、入れ替わったのかも。
その先の物語を、少年はしらない。

だからこそ、彼のところに置かれていく、
差し入れのあてにも気が付かない。



変わったこと。

寝床にしてる保健室に、沢山の宝物が増えたこと。
身に着けるものが増えたこと。
半端であることを気にしなくなったこと。

生きているとも、死んでいるとも言えなくて、
そこにいるのか、いないのかもわからなくて、
人かどうかもわからない。

曖昧さを気にしなくなった。
そこに、自分がいればそれでいいかなって、思うようになったのかもしれない。

子供は、難しいことを考えるのが苦手だから。

それからもう一つ、噂が増えたこと。



「夜の学校、誰もいないはずなのに甘い香りがするんだって!」



「オバケがお茶会してるらしいよ」




「なんか、変な噂、増えてない……?」


気が向いた時に、お菓子を焼いている。
誰かがいつ来てもいいように。

最近、雨降る学校を飛び出して、噂は、晴れた空の下
ほんの少しだけ、街をかけている。
どこかで、鳥を探しているのかも。





『後悔』

素直になれなかった少年の後悔。
言えなかった言葉の数は、いくつだろう。
だけれど、それでも、心では、
きっとみんなの事を想っています。


『転生』

人から、怪異になった少年の話。

前に踏み出すための一歩。
それまでの休息。
人であることを少しだけお休みさせてね。

これから、人になるのか、あるいは、怪異となるのか。
半端な少年はどちらに転がるか。
まだきっと、迷ってる途中。




『未来』

色んな人達と結んだ、約束。
いつかの未来、また会いましょう。
また、集まりましょう。

それまで、またね!








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