Eno.322 恋路 六六  【記録】山奥の自宅にて - せせらぎの河原

「はぁ……、寂しいなぁ」


お姉ちゃんが手紙を書き置いてどこかに行ってしまってから、
早いもので2ヶ月が経った。


「そんなに私に抱えられるのが嫌だったのかなぁ。
 私は頼られて嬉しかったけど……」


洗い物を終えて炬燵に足を入れると、
どこか温もりが弱々しい。
布団をめくり上げると、底の炭が白く小さくちびている。

慌てて炭を継げば、
息切れた炎が新しい身体に移って、
いつも通りの温もりを冷えた手足に届け始めた。


女はそのままごろんと横になって、
梁の走った天井を見上げる。


「こんな事なら早く教えてあげれば良かった。

 鱗を全部砕けば飛べるようになる、って」








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