Eno.355 決闘の天使デスデュエル    - たそがれの頂


『その手に遺った残骸こそがお前の罪』


『"正しさの証明"は終えましたか?』


『おかえりなさい』


『おかえりなさい』


『おかえりなさい』


さようなら、天使様。


「ああ、」




「ただいま。」




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一羽の天使は祈りに応じた。

そこには罪を見通す眼もなければ、善悪を決定する権限もない。
何も映せぬその眼では、言われぬことまでは解らなかった。

天使には愛も人心も御し難い。
それは人も、人をかたどった者たちも然り。













一羽の天使は、いつか己が棄てられる日に怯えている。

花壇に植えたままの花を片付ける。鉢植えを洗う。
種を産む前に摘まれた徒花たちを束ね、空になった器に手向けた。







「ドラ」


「……」


「ドララ……」


「……どうした?
 連れて行かんぞ。お前に空は住みにくかろ」


「…………」


「なんだそれは……オレの真似か?
 お前もよくないことばかり覚えてしまったな」


「大丈夫。もうそんな顔はしなくていい。オレも、お前も」


「…………」


それにだッッッッ!!!!


ドラッ!?!?


「聞いて驚け、既に家主に手紙や書類は送ってある。
 うちはペット禁止だが観葉植物ならばワンチャン!」


「承諾さえ得られれば迎えに来る。
 それまでは大いに期待せずに待つといい」


「…………」


「ドラ! ドラッ!」


「痛ッ! なぜ叩く!?
 家主に実物をちゃんと見せろってことか!?」





一羽の天使の身には、主から賜った一粒の愛。
今日もまた、その愛のために堕ちることを選ばなかった。








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