Eno.751 イェッタ  夢なりの楽しみ - たそがれの頂

蜂蜜は、遂に見つからなかった。

だが、この好物探しは何の確証もない思いつきで、
3日しか取り組んでいないのだから
至極当然の結果とも言える。

自らの願いや努力が結実するには
時間がかかるものであることを、
イェッタはこれまで長い時を経た経験・・・・・・・・から知っていた。

イェッタ
「それでも十分な結果と言えるけど。」


赤々と熟れた木の実ほどの小さな果実、
人の目から逃れるようにして自生していた、霧の中に佇む花。


それらを偶然見つけられたことを考えれば上々だった。
得た戦利品を振り返り、どのように楽しむか考えを巡らせる。

イェッタ
「果実に花の蜜をかけてお茶うけにして…紅茶で戴こうかしら。」


周囲に人間が存在する集落に身を置く際は、
彼らに危害を及ぼさないよう、特に祭事を台無しにしないよう、
自身も乗じて楽しむことはイェッタのルーティーンになっていた。

そのための、準備もした。



イェッタ
「(獣ではあるけれど、血も得られたもの。)」



なぜ吸血鬼は、肉ではなく鮮血でしか充足を得られないのだろう。
人とよく似た姿であるのに、
その生命を無心することを宿命づけられているのだろう。


これまで何度も繰り返した 答えのない問いを、
目先の楽しみと最近の出来事で頭の中を浸し、
鈍くすることしかできなかった。








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