Eno.238 近藤エミヤ  そして、彼らは出会った。 - ひかりの森

(本内容の本筋については、秋山勘徹(No.53)の「変なやつら 」を御一読下さい)

エミヤ
「ほォ……こりゃ凄えな」


異世界こと「ストロールグリーン島」の「庭園」に転送されてきた俺たち。
一目見たその広がる景色はまさに「絶景」―――。

島が浮いているくらい、これまでいくらでも見てきたもんだが、まあ招待状にあった通り「疲れを癒す」と言い切るだけのことはあるな。
良いバカンスになりそうだぜ!

さてさて、まずはどこにいったもんか……。
辺りを見渡してみると、遠目に入り口らしき場所を見つけることができた。
ゆっくり歩きながら行こうぜ、と言って向かおうとしたその時。

エミヤ
「ん? テツの野郎、何してんだ?」


入り口を見つけるまでの間の、ほんのちょっと目を離したその隙に、少し離れた所で、勘徹はなにやら変なやつらに絡まれていた。
いきなり契約を迫られて、しかもあいつはすんなり受けやがった。
契約内容、約款とか書面にしてもらえよな……。
仮にもお前、社長だろ? そんなんじゃ、会社潰れちまうぞ。

早くも変な同行者を引き連れた俺たちが入り口まで到着し、ハナコという庭園の案内用アンドロイドから諸々の説明を受けた。
しかしその時、ていよく島の調査を依頼されちまったんだ。
羽を伸ばす目的で来たんだが……まあ事前調査と言って出てきちまったし、こっちとしてもちょうど良い、ってことにしておくか。
ついでにランドラとかいう謎の植性生物もついてくることになったけど。
ちっこくて忙しなく動くコイツを呼ぶための名前がないと不便だな、ってことで、俺はコイツを「チビ」と名付けた。
愛着がねえ名前だって?
いやいや、コイツがいつまで一緒についてきてくれんのかも分かんねえしな。

そんなことを考えながら早速庭園へ足を踏み入れようとしたその時、俺の視界にある青年の姿が映る。
むむっ! かわい子ちゃん発見~!

エミヤ
「よう青年、そんなトコで何してんだよ?
 もし連れが居ねえなら、オジサンたちとちょっと遊ぼうぜぇ?」


俺のカンが告げている。
こいつとは良い付き合いができる、ってな。

え? 嘘っぽいって?
……あ~、なんかテツのやつも、呆れた顔でこっちを見てやがるなあ。
まぁまぁまぁまぁ、俺のカンを信じろって!
来て早々にこんな出会いがあるなんざぁ、まずまずの滑り出しってもんじゃねえか!

ちなみに、かわい子ちゃんは極 彩光(No.762)というらしい。
気分によって毛の色が変わる特殊体質らしく、しゃべってる間もちょろちょろ色が変わっていた。
不思議なヤツだなあ。まあどんな色してても表情がくるくる変わって可愛いけどよ。

……ところでココ、どっか茶ぁしばけそうなトコあんのかな?
無かったらいっそ、休憩できる所でも……な~んてな。ガッハッハ!


★☆★☆


そんなふうに話しながら花壇の連なる石畳の道を歩いていると、急に足元に何かが現れ、俺はよろけて彩光に抱き着く。
いや、この時ばかりは決して俺に下心は無かったぞ。

エミヤ
「おわっとっと!? ……わりィ彩光!」


謝ってから足元を見てみると、なんだか白くてふわふわした毛玉がこちらを見上げていた。
なんだこれ?
猫……みてえだけど、気配から察するにただの動物じゃない。
おそらく神格持ちかなんかだろう。

エミヤ
「おーしおしおし猫助~。悪かったなあ! ほれ、テツ。やるよ」


軽く撫でてやってから、俺は猫を抱き上げ勘徹の頭に乗っけてやる。
テツのやつ、「なんで俺に乗せるんだ」みたいな顔してるな。
可愛いやつに可愛いモン乗っけたら倍カワイイだろ?

エミヤ
「似合ってるぜテツ。いっそこの休暇中、お前が面倒みてやれよ。
 俺のカンじゃ、こいつとも何かあるにちげえねえさ」


袖振り合うも他生の縁、っていうだろう?
ま、何かあるのが決して「イイこと」ばっかりとは限らねえけどさ。
俺には、きっとコイツも招待された側なんだろうと一目で分かった。
察しの良い奴なら誰にでも分かることだ。
なんせコイツは、ハナコに言われた「ランドラ」とかいう生き物を連れていたんだからな。
俺にテツに、話しかけた後で気づいたが彩光にもランドラがついてきてた。
となりゃあここに招待された奴はみんなランドラを連れてるって傾向があるわけだ。
ま、この辺の分析と予測は、今までの経験ってやつだな。

さて、俺はランドラに「チビ」って名前を付けてやったから、こいつは……。

エミヤ
「なぁ白チビ、お前、名前なんてんだ?
 シロって名前にすっか?」


―――何気なく語りかけた俺は……俺たちは。
このあと、彼が人語を解する毛玉だとは思いもよらず、言葉を返したことに驚いたのだった。

この毛玉の名は、レイヤ(No.249)、というらしい。
いや~、なんとなく気配からしてただの毛玉じゃねえとは思っていたし、しゃべる毛玉なんてのももちろん初めてじゃねえけど、突然だとやっぱりびっくりするよなァ……。

とりあえず、こいつはテツの上に乗せとくか。
あ~、たまに彩光に抱かせるのも良いかもなぁ。

いやはや、眼福眼福!
俄然、この休暇……じゃなかった、現地調査が楽しみになってきたぜ!
な、テツ!

……なんだよその顔。
お前だってその変な連中とすぐ契約交わして引き連れてんじゃねえか。
なら俺だって良いだろ~?








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