Eno.133 ジョシュア・ローランド  10日目 ひみつの庭 - ひみつの庭

ジョシュア
「たとえばここに、500の言葉があるとしたら。」


ジョシュア
「僕はその500の言葉を使い、
 僕とは何かを示すだろう。」


ジョシュア
「けれど、僕を示す言葉が500あったとしても。
 僕が“何を思っているか”を正しくは伝えられない。」


ジョシュア
「言葉は無力だからね。
 真実は、言葉では表せないところにあるから。」



ジョシュア
「必要なのは……」


ジョシュア
「“思う”とはなんなのか、ということ……」


ジョシュア
「ケーキを食べるとするだろ。
 それがどれくらいおいしかったかについて。」


ジョシュア
「僕だったらクリームの上品な甘さや、イチゴのつややかさについて語る。」


ジョシュア
「けど、人間が欲しがる答えは――
『おいしかったかどうか』だったりする。」



ジョシュア
「いまだに信じられないんだよ、本当にそれだけ!? って。」


ジョシュア
「おいしさってさまざまな部分に宿るんじゃなくて、
 たったひとくちを一言で表すの?」


ジョシュア
「……」


ジョシュア
「……もしかしたらそうなのかも……」


少年は世界を信じられなくなっていた。

ジョシュア
「とはいえ、僕は言葉の無力さと無意味さと、
“無駄じゃない”ことを信じる。」


ジョシュア
「それはきっと変わらないよ、僕はケーキのおいしさについて聞かれたら、
 スポンジがいかに適度なやわらかさをしていたかについて、語るから。」


ジョシュア
「それそのものが、いけないというわけではなく。」


ジョシュア
「そうじゃない何かを求めている人もいる……
 ということだと、僕は受け取っている。」


そうじゃないものを求められたなら、
求められたものを自分の中からなんとか探り当て、差し出さねばならない。

ジョシュア
「生きていれば、きっと見つかる。」


残された時間は多くはないけれど。








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