Eno.775 鳩当 心安  病気のはなし・2 - あざやかな花園

 まだ、私に沢山の管も呼吸器も必要なかった頃。

 私の病室に訪れた『天使』は、まず初めに意味不明な名前を告げた。
 多分数字とアルファベットで識別しているんだろう。覚えきれなかった。

 それから、長い話を始める。

『あなたの病気は、元々はこの世界を守るために作られたものでした。

 ……この世界には、外側に無限にある異世界の中の、悪意あるものたちから、
 沢山の資源や、知性体を奪い取られる時代がありました。

 その当時は神の如きものや世界を守る法則も無く、
 人が何人か消えるだけならまだ良くて、星が丸ごと一つ消えることも珍しくなかった。

 そんな中でもようやっと生命と文明の頂点を極めたものが現れる頃には、
 もう、その宇宙に存在する知性体は、その者たちだけになっていて……
 自分たちを上帝とし、宇宙を次の周回に進めることにしました。

 そうして、少し上の次元から知性体を見守る存在……
 私たちが『主』と呼ぶものとなったそれらは、
 その過去を嘆いて、今の世界で沢山の試行錯誤をしました。

 その一つが、あなたの病気の源です。』

 話が急に大きくなって、飲み込みきれなかった。
 それの壮大なSF設定が自分の病気と関係あるとして、それが何なのか、いい加減に話してほしいと文句を言おうとしたところで、


「あなたは、"期限の切れた爆弾"なの。」


 明け透けに、ひどいことを告げられた。








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