Eno.676 ✿  #005 雨  - くらやみの森

 
 あんなに晴れていたのに続く雨。もう何時間降っているんだろう。
 ずっと眠いのは雨のせいに違いない。

 さて、特に何も考えずに育てた満開のジオティアの花はどうしようか。
 とりあえず1輪は食べて取り込んでみた。
 今、やっていることに組み込むには不向きな力だ。
 でも私の本質に近いからかな、どうにもこの花々が近くにあると安心する。あまり好いことではないと思う。ねむい。

 本当は、色々と用事があるのだけれども。
 別にすぐに果たさなくてもいい口やくそく、とか                         でも、ねむいし

 一どねてから、かんがえる
 ねなくても平きなはずなんだけどな


強制的に文書化された夢、より

 ふと、瞼を開けば真っ暗な闇の中。
 私はまるでそこに床があるみたいに正座して、膝の上で両の手をぎゅっと握りしめていて
 見たくないと本能が訴えかけるのも無視して、顔を上げる。


「……あ、のね。花火、綺麗だったんだ」


「それとちょっとだけ、私たちのことを話したんだ」


「大丈夫だよ!大丈夫、寄りかからないよ」


 目の前にある、頭部のないひとがた私を私にしたものに相手に言い訳を重ねる。


「私っ、いきもの嫌いだって知ってるでしょ」


「大丈夫だよ大丈夫、大丈夫だから真っ直ぐ帰るから」


「大丈夫だよ」


 優しい施しを受けることが、怖い。
 絆されてしまいそう。
 でも、何度も裏切られているんだ。そのたびに壊れそうになってばかみたいだ。


「大丈夫」


私が信じていいのは私だけ私は私を信じられない


 この旅もじきに終わるから。
 また何も無い私だけの場所に戻って、此度の思い出を何度も反芻する日々を送るのだろう。
 夫を、人を文明を滅ぼした時と同じように過ぎ去ったことにばかりに目を向けて、それでも後悔できずにまたわらって

 地に足をついて歩くのは、人混みの中人にぶつからないよう歩いたのは、雑踏をあんなにも近くに感じたのはいつ以来だろう?なんて考えて何になるの。
こんなにも疲れている理由探しならば猶のこと。理由は明白で、けれども認めたくないもので、しかし何度考えたところで何も変わらない。

 何も無い状況に自分を追いやってようやっと気付いたのです。自分は他人とは共存できない、ということ。


「どんないのちも、しあわせになるためにうまれてくるんだよ」


 地に両足をついて歩くのは疲れます。        だって私は自分の両足で立つことも、ハイハイすることもなかったのです。
 人混みの中人にぶつからないよう歩くのは大変です。 だって私は思い出してしまうのです。箱に詰められたあの日のこと。
 雑踏をあんなにも近くに感じて酔ってしまうのも仕方ない。私は


「どんないのちも、しあわせにするために生きるんだよ」


 ……頭部のないひとがた私を私たらしめるものは、まるで頭部があるみたいに私に語りかけて、私を抱きしめてくる。

 そんないのちばかりじゃないよ。
 ほんとうはわかっているんだよ。理不尽が、不条理がありふれてる世界じゃ生まれたことそのものが罪だ。
                 現世が、地獄ではないと誰が言った?            罪だから罰せられる


「どんないのちも、いつかおわるんだから」


「どうか悔いなき、道を進んで」


                ……く続でまるき起か聞い言たみじ脳洗なんこ、てきて出びたぐら揺が私。罰の種るあもれこなんであれ早く起きたい!!








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