Eno.52 LReaper  記録③:ある日始まった悲劇。無情な崩壊の訪れ。 - はじまりの場所

愛しいあなたと、かわいい子供たちと、助けてくれる親友と。
ええ、この上ない幸せ! 幸せで、

ずっと、これが続けばいいって、思っていたのよ。



雪解けの季節、あの家族写真を撮って間もない頃だったわ。
いつも通り、朝から仕事で森に向かった夫が、そのまま忽然と姿を消してしまったの。跡形もなく。
どんなに探しても見つからない、どこにもいない。
不安がる子供たちを抱きしめて、待っているしかできなくて。

クレフ/クリス
「もうよるになっちゃったよ……」
「とうさま、どこにいっちゃったの?」

麻糸
「……大丈夫よ、きっとすぐ帰ってくるわ。」


……ことが起こったのは、その3日後の夜のこと。
子供たちを寝かしつけようとしている時、地面が揺れたの。
それはどんどん大きくなって、轟音と共に家の半分が崩れた。
月明かりの中に浮かんだシルエットは、巨大な魔獣。人を襲い喰らう獣。
ああ、よりによって、夫が、獣狩りの騎士がいない時にやってきた!

クレフ/クリス
「かあさん!!」「かあさま……!」

麻糸
「逃げなさい!!」


子供たちにそう叫んで、できる限りの術を組んだ。全力で戦った。
でも、だめね。その時のあたしはただの一介の義肢職人。できることなんてなかった。
ほんの少しだけ時間を稼いで、角を折られて、両脚を潰されて、それで意識がなくなった。

ああ、あたしここで死ぬのね。
せめてあの子たちが少しでも遠くに逃げてくれれば。









……それなのに、目が覚めたのよ。
どうしてかあたしは生き残っていた。
人喰いの獣に、喰われずに放置されて、助け出されて、病院にいたの。


「……ねえ あの子たちは?」


家の裏の森には、巨大な魔獣が残した破壊の跡と、

 
「子供ふたりぶんのわずかな血肉が残されていたって。」



麻糸
「……うそ。嘘でしょう?
 毎年写真を撮るって、約束したのよ?」

麻糸
「……やだ、返して、返してよ!」

麻糸
あたしの家族!あたしの一番星!
 あたしの幸せを!あの子たちを返して!!


こうしてあたしは、両足と、家族と、正気を喪った。








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