Eno.245 AL-000 フレデリック  時は反復し続ける - はじまりの場所

製造記録100年目

地上に進出してから40年目

ようやく汚染された地上の清浄計画から10分の1が経過した

核による破滅の隠された恐怖が入り混じった空気が混じった地上、
我はその地上を歩き続けては、活動範囲を広げている。

地上で粗末品ジャンクを改修ロボットに拾い集めてもらい、
清浄機に入れ、その粗末品をリサイクルし、正規品にしては資源にする日常。

使えなくなった資源を使えるようにする技術を作っておいてよかった。
生産効率は悪いが、いざとなれば地下空間の資源を好きなだけ持ってきてしまってもいいだろう。

最初は活動範囲も狭く、禄に移動できるわけでもない、とにかく必死になって計画を実行した
10年経っても成果を得られなかった時は流石に堪えたが、今はもう既に慣れきってしまった。

頼れるのは自分の技術と道具、我が手掛ける機械達だけ。
そういえば、困ったときは我の友や人間達を集めて会議していたのが懐かしい。





昔の事を思い出すたびに……、研究者と大いに討論した事を何度も何度も思い出す。

我の友研究者の計画としては、本来我は人間を破滅に導く機械竜を造りあげ、残った人類を地獄に叩き込む事だった
そして、我の提案を全て呑み、全て破綻するまで待っていたのだ。
しかし、計画は大きく逸れるどころか、我は人間を救い続けた機械竜と成った事だ。

続いて、我の友は破滅の計画を継ぐ管理AIロボット人間代表を造り上げた
しかし、我はあまりにも人間に近づきすぎたのか、それに畏怖した。
管理ではなく暴君として君臨し、人間達を道具と見る性能に、血も涙もない、心無い物に、恐怖した。

結果、我は管理AIロボットを人間代表にせず、普通の人間を代表にした。
我の友は計画を継ぐ事も出来ない事に絶望したのか、突然自害した…。

その過激思考の管理AIロボットは我の友が自害し昏睡状態になった後、
我は、誰にも見られないようにその管理AIロボットを廃棄用施設に移送し、燃やす事にした。

今思うと、我の友は突拍子もない、なんて計画性のないことをしたのだろうと憐れみも感じる。
だが、まだ残っている疑問符があった…。

何故我は破滅に導く機械竜から救う機械竜となったのか、
何故我の友は、我にそんなことをさせようとしたのか、人間達を滅ぼそうとしたのか。
何故、あのAIを我に見せたのだろうか…。

我自身の性能はアップデートするには容量が足りない。
その代わり、技術で道具や機械で補い、必死に機械竜としての威厳を保ち続けた。
我自身、もう少し電脳回路を増やせばこの謎にたどり着くのだろうか。





こんな事を、40年経ってもずっと考えている。
もう既に答えは分かっているくせに、分かりたくもなく、必死に自分を正当化し続けている。

我の友の意志を尊重し、あの管理AIを人間代表にし、ディストピアにしてでも人間達を管理すべきだったのだろうか。
それとも、新たな特異点として生まれた、名も無い新たな人間代表を全て信じた我が正しかったのだろうか。

明らかにあの一件から地上に対するモチベーションが落ちている。
この役目を果たせば、我は人間をまだ救い続ける事ができるのに。

駄目だ、思考を変えるべきだ、前向きに考えよう。

この地上を全て浄化し、人間達が暮らす上で不自由ない衣食住や娯楽等のサービスを作ろう。
色んな花を咲かせ、人間達に彩りを教えよう。
夢の世界から飛び出し、新たな世界をもう一度人間達と作ってみたいのだ。

ならばこのペースでは駄目だ、そんなに待たせるわけにはいかない。
しっかりしろ!我は人を救った機械竜だ!何をそんなに迷っている!我が迷ったら人類はどうすればいいのだ!
こんなに愛して、愛された機械竜は他に居ない!、だから我は人間が好きなのだ!。

机に突っ伏している場合ではない、今こそ、我が努力せねばならんのだ
今はもっとアイディアを出せ、もっと早く地球を救う技術を作れ、皆の元に帰る技術を作れば、きっと。

そう言って我は座りなおした後、真っ白なデータに、ひとさじの知識を加えた。





















今となっては、ヒトを招待し、この庭園に楽しく住む人々が羨ましい。
我が一番望んでいた光景を、我は見せられている、本当に妬ましい。
この庭園の中で、庭園を嫌うのは、我しかいないだろう。








<< 戻る << 各種行動画面に戻る