Eno.245 AL-000 フレデリック  時は扉が開いた時に 修正 - はじまりの場所

製造記録60年目

地上に出発まで、6時間

我の友が研究者が、この世を去った
我が地上に行く支度をする前に、突然死してしまった


………しばらく我はその間についてはあまり覚えていない。


皆が悲しむ中、我は淡々と地上に行く支度をした、
とにかく、本当に何も考えないように。

皆が望む機械竜として、穢れた地上を修復する機械竜として、
我の友として人間側の代表は誰にするか、後継者を予め決めていた。
友に言われた言葉を、全て遮ってでも、我が後継者を決めたことにした。





1年前のことだ

我の友は自分が亡くなった時の後継者として、自分の手で作り上げた管理AIロボットに任せて欲しいと見せてくれた。
だが、我はそのAIの危険性を見抜き、たった2時間が1年に感じるほどに討論した。
人を管理するのではなく、征服、支配を権化の管理AIシステムを組み込んでいたのだ、
そんな管理AIは、必ずディストピアを生む、そんなことはあってはならないのだ。

長い討論も諦め此方で後継者を決めると言った際、友は酷く感情的になり、全てを打ち明けた。
討論が続き、我の友にフレッドを造ったのは愚かな人間達に罰を与える為だと言われ

「お前が人間達を救ったことに対して酷く怒りを感じていた」

「お前が立てる計画は全て上手いく、人間達はお前たちを信じていく、
 それを人間が台無しにして怒り狂って徹底的な管理と支配をしなかった事に憎悪を感じていた」

「お前なんて造らなければよかった」


そう言ってから、友はどこか行ってしまい…自害しようとした
我が必死に見つけ出して一命はとりとめたが、昏睡状態になってしまった

もう命は短くないとも言われたが、我の都合によって生かしてしまった。
生きてほしかったから生かすのは、酷い事である事も分かっていた
だが、我が地上に出るその最後の姿と、地上に住める大地を、友に見てほしかった。

そして、謝りたかった

其方の意志を汲み取れなかった事を、意志を信じてあげたかった事を、約束を守れなかった事を。





地上に出発まで、1時間前

人間達が世話しなく動く中、誰も我を見る者は居なかった。

心配してくれる人も居た気がしたが、何も聞こえなかった事にした。

我が用意した別世界を作る技術と体と意識を分離させる技術が、今も目の前で使用されている。
夢の世界を作った後、人間達の体をコールドスリープ、意識を夢の世界に移住させた。
事前に夢の世界に住む住人が既にコールドスリープした人たちを案内しているだろう。

夢の世界は人間達が望むものを作り上げる無限の世界だ
資源を使わず、自分たちの想いのままに作り上げる世界を、我が居なくてもきっと作り上げると信じる事にした。





地上に出発まで5分前

地上に向かうエレベーターに乗っている
本来は此処に居る間は達成に向けての高揚感もあるはずだろう、
それでも我は、地上に上る機械音が少し騒がしい事だけ、不満を持つことしかできなかった。

全人類は既にコールドスリープした、
開けっ放しの小さな次元の先から、喜びに満ちた笑い声が聞こえたような気がする。

エレベーターが上がり切った先、目の前には扉があった、
此処から先は一人だ、きっと怒鳴る事も笑う事も泣くことも、喜ぶこともないだろう。

だが、それを望む人が居るならば、それでも世界を救えと言うならば、
愛しの人達の為ならば、喜んで救って見せよう。

そう心の中の独り言を吐き切った後、扉を開けた。








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