Eno.733 木早 永心  この地での記録1 - はじまりの場所

 この島に着いて幾日も経った。
準備に手間取り探索は遅れがちだったが、先達の情報に感謝しつつ駆け足で島を巡ってみた。
その内に、この島では何を目指せば良いのか。何をすれば戦いやすくなるのかを感覚で掴むことが出来た。
学ぶより慣れろということだな。
不思議な環境故、今ひとつ己が技量を最大限に発揮すべき術は未だ見つかっていないが、まずは最低限の支度は整えたと言ったところか。

 流れ者故、一つの場所に長居をせず、旅路を共にする者も居なかったが、この島ではそうも言ってはおられぬ。
探索を共にする協力者の存在が不可欠であろう。
島につき目についた探索者の幾名かに協力を仰いだが、皆快く引き受けてくれた。
感謝するばかりだ。

 この地では、他の地では目にかからぬ不思議な植物が多く生えている。
植物の世話など久しぶりであったが、左程神経質になる程の繊細な植物の類ではないらしく、まずまず上手く出来ているのではないだろうか。

 ふと、故郷にいた頃に仙人掌の世話をしていたことが思い出された。
あの植物もあまり手間をかけずとも育ってくれた。
剣の修練にばかり熱していた私が、それでも育てられたあの仙人掌は今も故郷の庭に生えているのだろうか。








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