Eno.1 椋 京介 はなのきもち - はじまりの場所
人に意志があるのと同じように、
花にも意味があるのだろう。
優秀な人間はそこにいるだけで周りに大きな影響を及ぼす。
その花もそこにあるだけで周りに大きな影響を及ぼす。
どちらも大小はあれど、
どんな人、どんな花でも周りに影響を及ぼす。
それはきっと、人や花に限らず、
全ての"もの"は、意志や意味を持ち、
様々なものに影響を与え、そして影響を与えられるのだろう。
そんな繋がりだらけの世の中で、
"自由に思う"にはどうすればよいのだろうか。

京介
「...ダリ。」
「...ダリ。」

京介
「何を見て、何を感じて、何を思っているんだろうか。
僕の手の中で大輪を咲かせる君は。」
「何を見て、何を感じて、何を思っているんだろうか。
僕の手の中で大輪を咲かせる君は。」

京介
「大きく、煌びやかで、存在感を示す君は、
きっと、様々なものに影響を与え、与えられ。」
「大きく、煌びやかで、存在感を示す君は、
きっと、様々なものに影響を与え、与えられ。」

京介
「色々なものをその花弁にくっ付けて、
そうして君は大きな花弁になったのだろうか。」
「色々なものをその花弁にくっ付けて、
そうして君は大きな花弁になったのだろうか。」

京介
「様々な関係性の中で揉まれて、その上で自分の花弁を湛える。
果たしてそれは自由なものなのか、もしくは...。」
「様々な関係性の中で揉まれて、その上で自分の花弁を湛える。
果たしてそれは自由なものなのか、もしくは...。」

京介
「それでも僕は........、君は自由な花だと思いたい。」
「それでも僕は........、君は自由な花だと思いたい。」
人の記憶に残るその花は、
人の記憶によって大輪となるか。
Fno.3 ダリ
大地の上で最も鮮やかな炎が、花という姿をとったなら――それがダリである。
幾重にも重なる花弁は、整然と並びながらも力強く、まるで色彩そのものが渦を巻いて広がっているかのようだ。
赤、橙、金……暖を帯びた色たちは、咲くたびに光を抱き込み、見る者の視線を逃さない。
かつて宮廷の舞踏会では、王妃がドレスの胸元にダリを飾り、その一輪だけで誰よりも際立って見えたという。
その豪奢な美しさは、宝石や金細工よりも、人々の記憶に深く刻まれた。
ダリは何も語らず、ただ咲くだけで、空間そのものを自らの舞台へと変えてしまう。
手入れは驚くほど簡素で、土と陽光を与えればたちまち花を開く。
しかしその容易さは、決して平凡さを意味しない。
むしろ、優雅とは、余裕の中で輝きを保ち続けられる力のことなのだろう。
一輪で宴を飾り、一輪で心を奪う――それがダリという花である。