Eno.465 アレイスタ 新天地へ向けて - はじまりの場所
「決まったか?」
俯き気味に深刻な顔をした妹にそう尋ねると
「……まだ」
「……じゃあ、考えたか?」
「うん……」
わずかに頷く。
優しく笑って、その考えを聞かせてもらう。
「ええと、私宛に招待状を届けてくれたディアンさんとペルラさんたちのいる世界か、
カペルルちゃんのいる世界か、この世界に残るか、だよね」
「そう。
俺の交友関係が狭くて申し訳ないけど、行けそうな世界はそのへん。
ディノの世界も聞いてはみたけど俺達には向かなそう」
チェリアが言うのに頷いて、俺は続けた。
「ディアンたちの世界は、魔力があるけどそこまで珍しいものじゃないらしい。
捕まって金蔓にされるなんてことは早々ない。
ただ、魔力のこもった道具はあっても、魔力を使った機械はなさそうだ。
でも、迷い込んでも訝しむやつはいなさそうだって。
カペルルの世界は確か山下と同じとこだから、魔力はない。
魔法的なことは使わないっていうか、使えないと思ったほうがいい。
でも電気とかで動く車はいっぱいあるらしい。
美食の国って言われてて、戦闘に不慣れなカペルルが不自由なく暮らしてる。
言葉が難しいらしいからここを出て翻訳の魔法がなくなったら多分苦労するって言ってた。
最後は、ここ、ストロールグリーンに残る場合。
祭りが終われば俺達は招待客じゃなくなる。
商売するにも色々手続きとかあると思うけど、今のとこ不自由を感じることなく暮らせてる。
一番安心感のある選択肢だ」
チェリアはうんうん頷きながら最後まで聞いて、口を開く。
「行ってみたい、じゃなくて、そこで暮らす、ための選択肢なんだよね」
「そうだ。
ゲートポートがみんなに解放されてる世界はその中じゃ多分ここだけ。
…………ちなみに行ってみたい世界は?」
「美食の国」
「わかる」
頷き合ってしまった。
「まあ、暮らす難易度は一番高いかもしれないけど、行ってみたいよな……」
「気になる……遊びに行きたい……」
「まあ、そういう気持ちは置いといて。
暮らすって目線でどこがいいってあるか?
まとまってなくてもいいから話してみて」
そう言うと、妹はたどたどしくけれど懸命に話し始める。
「ディアンさんたちの世界は、その中では私たちの世界に一番似てるのかなって思った。
多分慣れるのも早くて、過ごしやすいのかも。
カペルルちゃんの世界は、車がたくさんあって、でも電気や油で動いていて。
魔力がないっていうのが想像しにくいけど、すごく機械とかが発展してるのかなって思った。
だから、カペルルちゃんは戦いとか苦手でも普通に暮らしてられるんでしょ?
魔力もなくて化物もいないの想像つかないな……。
ここは、慣れてきたし、過ごしやすい。
お祭りが終われば人も減って、商売に打ち込んでもお客が来るかはわからないけど
それはどこの世界も同じだし、ここが一番安心できるよ。
でも、でもね、」
チェリアは一度言葉を切って、眉を寄せる。
「退屈、なのかも。
娯楽はいっぱいあるよ?
でも、なんか、ドキドキしないっていうか……。
ずっといる場所って言うと、違う気がする……。
他の世界のこともよく知らないのにそういうのは変かもしれないけど……」
「いや、わかるし、変とか置いといて何でも聞きたかったからいいんだ」
俺は笑って頷く。
「一番安全で一番平和なのに、なんだか選べないよな。
わかる」
チェリアは首を傾げて、
「兄ちゃんはどう思ってるの?
…………カペルルちゃんの世界に行きたいんでしょ?」
おずおずとそう聞いてきた。
「そういうのは置いとけって釘刺されてるからなぁ……。
そこで暮らすことだけ考えたらチェリアと同意見だ。
多分、ディアンのとこが良いのかも」
そう答えてから、
「チェリアは、目標ってあるか?」
「目標?」
「俺らの世界で魔法を習ってみたいって言った結果はちょっとあれだったけど。
ディアンのとこならもっと魔法の勉強ができると思う。
身を守る魔法も覚えたら、チェリアの魔力はきっと活かせるよ」
優しく目を細めた。
チェリアは拐われてから自分に自信をなくしてしまっている。
自分が判断を間違えたから捉えられてしまったし、
じいちゃんが死んだのもそのせいだと思っている。
店は一緒に頑張ってくれているものの、それ以外のことにはずいぶん消極的だ。
結局自分で友だちを作るようなことも今までしていないと思う。
だから、チェリアがもし自分の才能を磨きたいと思うなら、それは絶対応援したかった。
「でも、わたし、もう魔法はいいよ。
それなら、魔法のない世界で頑張りたい。
兄ちゃんと一緒に、クレープ屋さんを頑張って、はらぺこグアマン号を繁盛させるんだ。
それがわたしの目標だよ。
兄ちゃんの目標は?」
そんなにすっぱり切り捨てられるとは思ってなくて、ちょっとひるんだ。
自分のことを考えないようにして言ってるのかなって思ったけど、チェリアの目は真剣だ。
「わかった。
俺の目標はじいちゃんの味を超えること。
じいちゃんから借りたはらぺこグアマン号じゃなくて、俺の店のはらぺこグアマン号にしたい。
だから、美食の国で腕を磨きたいんだ」
チェリアが目を細めて笑う。
「ふふ、結局カペルルちゃんのところになっちゃったね」
「そうだな。
ちゃんと二人で話した結果だから、そうやってカペルルに伝えないとな」
なんだか俺も可笑しくなって、二人で笑った。
「あ、でも、カペルルに頼んでもやっぱり無理でしたはあり得るから、
その辺わかっててくれ」
「うん。
大丈夫、わかってるよ。
でも、兄ちゃん変なことしてカペルルちゃんに嫌われないでね」
「お前さぁ…………そういうとこ……」
何か言い返したかったけど、チェリアが楽しそうだったのでやめた。
楽しそうに笑う妹と新天地へ行けるならちゃんとやっていける気がする。
このことをカペルルに話して頼んでみて、あとは…………
「兄ちゃん、ずっと作ってたやつできたの?」
「一応……。
砥石使うの難しかったけど、できた、と思う」
「喜んでもらえるといいね」
「そうだな」
俯き気味に深刻な顔をした妹にそう尋ねると
「……まだ」
「……じゃあ、考えたか?」
「うん……」
わずかに頷く。
優しく笑って、その考えを聞かせてもらう。
「ええと、私宛に招待状を届けてくれたディアンさんとペルラさんたちのいる世界か、
カペルルちゃんのいる世界か、この世界に残るか、だよね」
「そう。
俺の交友関係が狭くて申し訳ないけど、行けそうな世界はそのへん。
ディノの世界も聞いてはみたけど俺達には向かなそう」
チェリアが言うのに頷いて、俺は続けた。
「ディアンたちの世界は、魔力があるけどそこまで珍しいものじゃないらしい。
捕まって金蔓にされるなんてことは早々ない。
ただ、魔力のこもった道具はあっても、魔力を使った機械はなさそうだ。
でも、迷い込んでも訝しむやつはいなさそうだって。
カペルルの世界は確か山下と同じとこだから、魔力はない。
魔法的なことは使わないっていうか、使えないと思ったほうがいい。
でも電気とかで動く車はいっぱいあるらしい。
美食の国って言われてて、戦闘に不慣れなカペルルが不自由なく暮らしてる。
言葉が難しいらしいからここを出て翻訳の魔法がなくなったら多分苦労するって言ってた。
最後は、ここ、ストロールグリーンに残る場合。
祭りが終われば俺達は招待客じゃなくなる。
商売するにも色々手続きとかあると思うけど、今のとこ不自由を感じることなく暮らせてる。
一番安心感のある選択肢だ」
チェリアはうんうん頷きながら最後まで聞いて、口を開く。
「行ってみたい、じゃなくて、そこで暮らす、ための選択肢なんだよね」
「そうだ。
ゲートポートがみんなに解放されてる世界はその中じゃ多分ここだけ。
…………ちなみに行ってみたい世界は?」
「美食の国」
「わかる」
頷き合ってしまった。
「まあ、暮らす難易度は一番高いかもしれないけど、行ってみたいよな……」
「気になる……遊びに行きたい……」
「まあ、そういう気持ちは置いといて。
暮らすって目線でどこがいいってあるか?
まとまってなくてもいいから話してみて」
そう言うと、妹はたどたどしくけれど懸命に話し始める。
「ディアンさんたちの世界は、その中では私たちの世界に一番似てるのかなって思った。
多分慣れるのも早くて、過ごしやすいのかも。
カペルルちゃんの世界は、車がたくさんあって、でも電気や油で動いていて。
魔力がないっていうのが想像しにくいけど、すごく機械とかが発展してるのかなって思った。
だから、カペルルちゃんは戦いとか苦手でも普通に暮らしてられるんでしょ?
魔力もなくて化物もいないの想像つかないな……。
ここは、慣れてきたし、過ごしやすい。
お祭りが終われば人も減って、商売に打ち込んでもお客が来るかはわからないけど
それはどこの世界も同じだし、ここが一番安心できるよ。
でも、でもね、」
チェリアは一度言葉を切って、眉を寄せる。
「退屈、なのかも。
娯楽はいっぱいあるよ?
でも、なんか、ドキドキしないっていうか……。
ずっといる場所って言うと、違う気がする……。
他の世界のこともよく知らないのにそういうのは変かもしれないけど……」
「いや、わかるし、変とか置いといて何でも聞きたかったからいいんだ」
俺は笑って頷く。
「一番安全で一番平和なのに、なんだか選べないよな。
わかる」
チェリアは首を傾げて、
「兄ちゃんはどう思ってるの?
…………カペルルちゃんの世界に行きたいんでしょ?」
おずおずとそう聞いてきた。
「そういうのは置いとけって釘刺されてるからなぁ……。
そこで暮らすことだけ考えたらチェリアと同意見だ。
多分、ディアンのとこが良いのかも」
そう答えてから、
「チェリアは、目標ってあるか?」
「目標?」
「俺らの世界で魔法を習ってみたいって言った結果はちょっとあれだったけど。
ディアンのとこならもっと魔法の勉強ができると思う。
身を守る魔法も覚えたら、チェリアの魔力はきっと活かせるよ」
優しく目を細めた。
チェリアは拐われてから自分に自信をなくしてしまっている。
自分が判断を間違えたから捉えられてしまったし、
じいちゃんが死んだのもそのせいだと思っている。
店は一緒に頑張ってくれているものの、それ以外のことにはずいぶん消極的だ。
結局自分で友だちを作るようなことも今までしていないと思う。
だから、チェリアがもし自分の才能を磨きたいと思うなら、それは絶対応援したかった。
「でも、わたし、もう魔法はいいよ。
それなら、魔法のない世界で頑張りたい。
兄ちゃんと一緒に、クレープ屋さんを頑張って、はらぺこグアマン号を繁盛させるんだ。
それがわたしの目標だよ。
兄ちゃんの目標は?」
そんなにすっぱり切り捨てられるとは思ってなくて、ちょっとひるんだ。
自分のことを考えないようにして言ってるのかなって思ったけど、チェリアの目は真剣だ。
「わかった。
俺の目標はじいちゃんの味を超えること。
じいちゃんから借りたはらぺこグアマン号じゃなくて、俺の店のはらぺこグアマン号にしたい。
だから、美食の国で腕を磨きたいんだ」
チェリアが目を細めて笑う。
「ふふ、結局カペルルちゃんのところになっちゃったね」
「そうだな。
ちゃんと二人で話した結果だから、そうやってカペルルに伝えないとな」
なんだか俺も可笑しくなって、二人で笑った。
「あ、でも、カペルルに頼んでもやっぱり無理でしたはあり得るから、
その辺わかっててくれ」
「うん。
大丈夫、わかってるよ。
でも、兄ちゃん変なことしてカペルルちゃんに嫌われないでね」
「お前さぁ…………そういうとこ……」
何か言い返したかったけど、チェリアが楽しそうだったのでやめた。
楽しそうに笑う妹と新天地へ行けるならちゃんとやっていける気がする。
このことをカペルルに話して頼んでみて、あとは…………
「兄ちゃん、ずっと作ってたやつできたの?」
「一応……。
砥石使うの難しかったけど、できた、と思う」
「喜んでもらえるといいね」
「そうだな」