Eno.30 ライオネル=ロア=ルミナス 陰が静かに嗤えば。ー第2話ー - はじまりの場所

ある日の夜。
カツ、カツ、夜に響く足音。
先ほどの喧騒とは離れ、一人歩いていた。
「……ソラニワ、か。」
夜になり、涼しい風が鬣を揺らす。
オレンジ灯が地面のタイルを、建物を照らし、獅子をも照らす。
「表の方は、この甘っちょろい島で十二分に楽しんでいるんだろうな。」
「……オレの方はそうも言ってられないっていうのにな。」
青色の目がバンダナの影で光る。
「しかし……つくづく思うが、表がオレの方を認知していないっていうのは、かなり困るな。」
「あの家でしっかりと訓練する前に飛び出してしまったもんだ……。」
溜息をつきつつ、歩を進める。
「……先の、じじい。カルロスって言ったか。」
「ほかの奴に言いふらしたりしそうな奴ではなさそう……ではあるが、面倒だ。」
一度、来た道を振り返る。
一瞬みられているかのように感じた。
「……ま、いい。」
「さて、表のオレが消える前に、どう伝えたもんかな。」
今日も獅子は歩く。
光になるために。