Eno.489 オズワルド  03 Vengeance - はじまりの場所

神力を練り上げる度、左胸が焼けるように痛む
指を組み、前を見据えた
祈りに呼応して、まばゆく光を放つ真白の光柱が宙へ姿を現す
躊躇いも無く、それを眼前の怪物へ叩き込めば
双角を持つ黒い巨躯がのたうった
雪を蹴って身体を翻し、寸でのところで返し矢を掻い潜る
衝撃で抉れた土が背後で弾け飛び、ぱらぱらと頭を叩いた

自分の吐く息だけが白く、結晶になって空へ昇る
怪物の身体から流れ落ちた、黒い液体が地面を汚していく
あの時感じた、身体の芯から凍りつくような恐怖は
もはや無かった

それは手負いであった
あの日、私を永らえさせた者が討ちそこねたのだと言う
お陰で、悪魔狩りとしては若輩の自分でさえ追い詰める事が出来た
この手で、討ち取る事が、

……これが”理由”なのだとしたら、なんとあっけない事だろうか


額、胸、左肩、そして右肩

「父と子と、精霊の御名において、」

白い光が弾けて、堕ちて

「我らが神敵を討ち払い給え―」

地鳴りのような音を響かせて、双角の怪物が地に伏した


―悪魔は、最期に嗤っていた






「オズワルド、ここって休暇で来ているのよね
 一時的な滞在なのにこんなに本を持ち込んだの?」



「あぁ、それは……
 自分で持ち込んだ本もありますけど、
 借りた物もありまして」



「あら、もしかして図書館まであるの?
 いいなぁ!」



「はい。大きくて、蔵書量も随分な数でした
 貴女が務めていた図書館より大きかったですよ
 連れて行ってあげられなくて、申し訳ないですけど……」



「残念だけど……いいわ、危ないんでしょう?
 貴方がわざわざ意地悪言うはずないって
 事くらいわかるもの」



「そんなに大きい図書館なら
 時間無制限タイトル借り面白本探索デスマッチでも
 したかったところだけど……」



「なんです?



時間無制限タイトル借り面白本探索デスマッチ
 タイトルだけで10冊本を選んで
 面白い本をたくさん見つけられたほうが勝ちよ」



後ろ髪引かれますね……



「……あ!
 これ、私がバザーで選んであげた本?
 懐かしい!持ってきてくれたの?」



「まぁ、はい……」



「ふふ、
 こっちは貴方が小さい頃に好きだった本ね

 ……あ、これ」



「それは、この間図書館へ行った時に
 選んでいただいた本で、まだ読んでいる途中なのですけど……
 貴女は確か、読んだことありましたよね」



「えぇ、好きな本よ
 ミュージカルも見たわ」



「どんな本でした?」



「…………えーっと、
 どうだったかしら
 ううん、貴方、読んでる途中でしょう?」



「内緒」



「そうですか……」









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