Eno.489 オズワルド  01 Night mare - はじまりの場所

低く垂れ込めた、重い鈍色の雲から雪が舞い散る
炎から巻き上がる熱風に煽られ、多くは地上まで届かず
僅かに降り落ちたそれも、黒いコールタール状の液体に吸い込まれて溶けていった
積雪の合間、露出した土の上で女が倒れている
長い赤毛が乱れて辺りに散り、体から流れ出た赤いと血が
彼女の気に入りの緑のワンピースと土に混じり、歪な模様を作る
ぴくりとも動かない彼女に覆いかぶさって、体温を失い始めた細い肢体をかき抱いた

周囲で火花が爆ぜる
二人を囲むように劫火が燃え、眼前にはこの状況を作り出した巨躯の異形が立ちはだかっていた
悪魔、我々人間が悪魔と呼ぶ、それ
炎を反射してなお黒い体毛、頭から生えた角は禍々しく捻じれ、
黄色く濁った瞳の中、水平に切れ込んだ瞳孔が眼下の二人を睥睨した
歯の根が合わないのは寒さだけが理由では無い

化け物が顔を歪める
始めこそその機微を察し得なかったが、あれが口を開き、肩を揺らすのを見てようやく理解した
嗤っているのだと
焼け残った木々がびりびりと震える
胃が裏返りそうなほどの恐怖と寒気に支配され
意識は白く、白く、塗りつぶされていった


あの日、全てが終わってくれればよかったのに
沈んだ太陽は地平から顔を出し 再び私を照らす






「おはよう、オズワルド!
 よく眠れた?
 うなされていたから起こしてしまったけど」



「…………」



「あぁ、そういう感じですか……?」



??何が?どういうこと?



「いえ何も……こちらの話で……

 眠れはしましたが余計に疲れました
 夢見が悪くて」



「あら、それは大変
 二度寝する?それとも朝ごはんにする?」



「……どちらも気乗りしないので
 紅茶を飲んで朝ごはんとします」



「オズワルド、紅茶はご飯じゃないわ」



「知ってます」



「ご飯を食べないと身体を壊すわ」



「ただちにに影響はありません」



…………



いだだだだだだ



「もぉ~、幾つなの貴方!
 大きい駄々っ子のお世話なんて
 したくないけど!?」



「いいじゃないですか、体調を崩しても
 困るのは自分だけなんですから」



「みなさんが心配するでしょう
 クラリッサさんとか、ウォルターくんとか」



「……クラリッサに、ウォルター?」



「えぇ、貴方の仕事場の
 よくお世話になっているんでしょう?
 もう少し自分の面倒を見られるように
 なったほうがいいわ」



「……師匠せんせいの名前を出すのは反則です
  彼女に頭が上がらない事を
  わかって言っているでしょう」



「オズ?
 ウォルターくんも頭数に入れてあげて?」



「ウォルターはまぁ、ほら……



まぁって事は無いわ……









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