Eno.52 LReaper  記録①:ある魔王の独白。君はリーパーを知っているか? - はじまりの場所

カルツァ
「……なんだい、君。意外そうな顔をするけれど。
 そりゃあ、この魔王たる僕にだって怖いものくらいあるさ。」


カルツァ:ある世界に住む、魔王の称号を持つ魔術師。パンケーキと旅行が好き。

カルツァ
「『あれ』を見たのは10年くらい前かな……
 けれど、今の僕でも敵うかわからない。
 それほどまでに『あれ』は恐ろしいものだったし、
 なにより相性が悪かった。」


僕がまだ、単独行動を許されて間もないくらいの幼さだった頃だ。
縁の深い空の庭園が開かれると聞いたから、休暇を貰って訪れたんだよ。
そこで旧友に出会ったり、まあ普通に楽しんでいたんだ。

人気のない草原にいた時だ。遠目に人影が見えた。
長い白髪をなびかせて、大きな杖を持っていた。
それがふわりと振り向いて、『目が合った』。
かなり遠くにいたんだよ、それなのに、『あれ』は完全に僕のことを、いや、僕の魂を見ていた。

今でも忘れられないよ。あの異様な瞳。
僕の混色とも違う……なんと言えばいいのかな。
渦を巻いたような、見ているだけでその奥底に落ちていくような……
ブラックホールのような目をしていた。

それが途端にこっちに走って近づいてくるから、僕は必死で逃げた。
浮島の端まで行って飛び降りて、まだ小さい翼でなんとか滑空してね。
生きた心地がしなかったよ。

どっと疲労した僕は喫茶店に入った。
カウンター席でマスターにあったことを話したら、彼は『あれ』を知っていたようなんだ。


「坊主、そりゃあ『リーパー』だろうさ。ここにも来てやがるんだなあ」

「リーパー……?そいつはなんだい?」

「真っ白な髪に、紫色の角。杖だか鎌だかを持った、異様な瞳と異常な言葉の女。
 その正体はなんだか知らないが……世界の枠を一足飛びに越えて、生き物の魂を刈り取るんだそうだ。」

「飛び越え(Leap)、刈り取る(Reap)、だからLReaperリーパーか……」

「追われたってことは、気に入られちまったんじゃねえか?早めに帰った方がいいかもしれんよ」

「……そうかもしれないね。」


そんなわけで、僕は少し早めに庭園を後にした。
いや、しかし、それが……

カルツァ
……まさかこんなことになるなんて、ね……









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