Eno.52 LReaper  幕間①:これまでのあらすじ - はじまりの場所

技術者である麻糸まいとは、夫とこどもたちと一緒に幸せに暮らしていました。
しかしある日、突然夫が失踪。
その数日後、残された妻子を巨大な魔獣が襲いました。
息子は魔獣に食い殺され、娘は密かに生き延びましたがとても帰れる状態ではなく……
こどもたちを逃がそうと戦うも両脚を失った麻糸は、こどもたちまでも失ったと知って心を壊しました。

麻糸
あたしの幸せを!あの子たちを返して!


狂気に取り憑かれた麻糸は、『夫とこどもたちは異世界にいる』と信じ込み、異世界へ渡る研究を重ねました。
そして大罪である異世界渡航を敢行。長い旅が始まります。

何度も世界を渡りながら旅をする麻糸は、劇場だけの小さな世界にたどり着き、運命を変える出会いをします。
彼はアウトサイダー。麻糸とその家族のことを、物語としてよく知る人物でした。

アウトサイダー
「君に全てを教えよう!」


アウトサイダーは、麻糸やその家族が悲劇の中にいるのは、演奏者Playerという存在が悲劇の運命を奏でているからだといいます。
アウトサイダーは、夫とこどもたちの今の様子も見せてくれました。
それぞれが、地獄のような苦しみの中で……それでも、家族の再会を願って歩き続けていました。

家族と再会するため、家族を悲劇から救うため、麻糸は再び旅を始めます。
世界を渡っては、その世界の技術を身につけて、力をかき集めていきました。

しかし、何度目かにアウトサイダーのいる劇場に戻った時、麻糸はひどい悲劇を目の当たりにするのです。
夫とこどもたちが、再会を果たした……かと思えば、それはあまりに凄惨で、むごいものでした。
演奏者Playerは、足掻く家族を嘲笑うように、更なる悲劇を奏でていたのです。

麻糸は、取り憑かれたように、悲劇を繰り返し見続けました。仔細まで頭に焼き付けて、
どこかに彼らを救うヒントがないかと目を皿にして、繰り返し、見続けました。
黒かった髪の色は真っ白に抜け落ち、僅かしか残っていなかった正気はとうとう砕け散り、
怒りと復讐心に満ちた決意が彼女を満たしました。

マイト
殺してやる。


家族と再会するため、家族を悲劇から救うため、
そして……悲劇を奏でる演奏者Playerを見つけ出し、殺すため。マイトは再び旅を始めました。
正気も倫理も投げ捨てた技術者に、失うものはありません。手段を選ばず、彼女はあらゆる力と叡智を求めました。

その中でも彼女が極めたのは、人の魂を利用する技術。
材料として人の魂を刈り取り、精製して素材やエネルギーにしてしまうのです。
彼女は自分自身の魂にまで手を出し、どんどん壊れていきました。

正気を失いました。時間感覚を失いました。正常な言語機能を失いました。
あらゆる思索は瞬きのうちに終わり、元より頑強だった肉体は老いることも傷つくこともありません。
旅をしていた時間が、一瞬だったのか、久遠なのか、それすらわかりませんでした。

次にアウトサイダーに会った時、彼は喜んだ様子で彼女を迎え、夫とこどもたちの様子を見せてくれました。

アウトサイダー
「見てくれたまえ、素晴らしい結末だ!」


彼らは、自らの力……そして、「クロスワールド」:世界の交差点、
演奏者Playerの思い通りにならない世界に集った異世界の勇士たちの力で、
悲劇を打ち破り、今度こそ幸せな再会を果たしていたのです。

……しかし、そこにはマイトの影だけがありません。
演奏者Playerは、物語からマイトを排斥していたのです。
家族が決して集まることのないように、ハッピーエンドを完成させないために。

彼らを救うために、何もかもを捨てて足掻き続けた自分の旅は、無駄だった。
演奏者Playerの奏でる運命を脱することもできなかった。
家族の幸福を喜びながらも、ひどい無力感に覆われたマイトは、
ぼんやりと家族の再会をリピートして見続ける時間を過ごしました。

いつまでそうしていたでしょうか。
ある日、アウトサイダーがマイトにプレゼントをくれました。
それは、神の庭への招待状。

「 素敵な庭園をオープンしました。  
  ここは、周囲すべてが空という空間の中に浮かんでいる、一つの島。  
  広々とした世界と豊かな自然。冒険の疲れを癒やすのにぴったりです。  
  良かったら、ぜひお越しください。                」


アウトサイダーは、自分が使えば小さな世界から出られるはずの招待状をマイトに手渡し、ある計画を語りました。
マイトが招待状を用いてストロールグリーンに行けば、物語がタイムパラドックスを起こし、
演奏者Playerの奏でる運命を破って家族と再会できる……というのです。

マイトは再び立ち上がりました。
今度こそ、家族と再会し、真の幸福を得るために。

マイト
「今度こそ!本当に幸せな結末にしてやるわ!」









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