Eno.374 如月 真二 Aの招待状/Welcome to Stroll Green - はじまりの場所
朝8時、都会の交差点は朝の喧騒に包まれている。如月真二、25歳、ORANGEジャーナルの見習い記者は、リュックを背負い、いつものようにスナックの空袋をポケットに突っ込んでオフィスへ向かっていた。だが、交差点で「ガシャン!」という音が響く。軽い追突事故だ。追突された側の運転手が車から降りて困惑している一方、追突した側の運転手が「てめえの運転が悪いんだろ!」と怒鳴り散らしている。
真二の正義感が瞬時に火を噴く。「いや、今のあんたが悪いだろ!?」と、ノートを握りしめながら事故現場に突っ込んでいく。お人好しで正義感の強い彼にとって、理不尽な怒鳴り声は看過できない。
「関係ないやつは黙ってろ!」と追突側の運転手が真二に詰め寄るが、真二は一歩も引かず、「いやいや、信号赤だったじゃん! ちゃんと見てたんだから!」と反論。だが、怒り心頭の運転手は真二の胸ぐらを掴み、頬を殴った。真二の頬に青あざができ、よろめきながらも「暴力はダメだろ!」と叫ぶ。
騒ぎを聞きつけた警察が到着し、事情聴取が始まる。真二は「記者として真相を確かめたかっただけです!」と訴えるが、警官には「あなた、関係者じゃないですよね?」と呆れられ、解放されたのは8時40分。始業時間の9時まであとわずかだ。
編集長との電話
走りながら真二はスマホを取り出し、編集長の佐藤亮太に電話をかける。亮太は真二の大学の先輩で、ORANGEジャーナルで彼を半ば無理やり引き受けた人物だ。
「編集長! すみませんでした、遅刻です!」
「またか、真二。今度はなんだ? 寝坊か?」
「違います! ちょっと…交通事故に…」
「は!? お前、大丈夫か!?」
亮太の声が心配に変わるが、真二が「他人の事故に首突っ込んだらこうなっちゃって…」と説明すると、長いため息が聞こえる。
「…お前、ほんとバカだな。なんで毎回そうやって突っ込むんだよ。いいから9時半までには来い!」
「分かりました!」
真二は青あざをさすりながら、雑居ビルのオフィスへ全力疾走する。
9時25分、ORANGEジャーナルのオフィスに滑り込む真二。雑多な部屋には、コーヒーの染みが染みついた編集長のデスクと、壁に貼られた過去のスクープ記事が目に入る。亮太はコーヒーカップを手に、真二の青あざを見て苦笑いする。
「顔、ひでえな。ほんとバカだろ、お前」
「でも、編集長! あの事故、なんか裏が…」
「はい、ストップ。いつもそれで話が脱線するんだよ」
亮太は話を遮りつつ、ふと笑みを浮かべる。
「そういえば、真二。この間の『髪の毛が生えたカエル』の記事、ネットで結構話題になってるぞ。バカバカしいけど、読者が食いついてる」
真二の顔がパッと輝く。
「マジっすか!? やった! あの変なカエル、絶対スクープだと思ったんですよ!」
その記事は、真二が近所の老人が飼っていた奇妙なカエルを、半ば冗談で書いたものだったが、かなり話題になっていた様だ。
亮太はデスクから一通の手紙を取り出し、真二に放り投げる。
「で、これ。お前宛に届いてたぞ」
封筒には、真二の名前が丁寧な筆跡で書かれている。開けると、空に浮かぶ島『ソラニワ』の『ストロールグリーン』への招待状が出てきた。
「素敵な庭園をオープンしました。
ここは、周囲すべてが空という空間の中に浮かんでいる、一つの島。
広々とした世界と豊かな自然。冒険の疲れを癒やすのにぴったりです。
良かったら、ぜひお越しください」
真二は目を丸くする。
「…空飛ぶ…島?それになんで俺宛なんだろう?」
不思議そうに首を傾げる真二に、亮太は肩をすくめる。「さあな。お前のバカみたいな正義感が、誰かの目に留まったんじゃねえの? まあ、お前の突っ走る性格なら、こんな変な島、ちょうどいいだろ。行ってこい。ガツンと読者を掴む記事、期待してるぞ」
その夜、真二は姉の優と義兄の駿が住むアパートを訪ね、招待状の話を切り出す。美咲は真二の2歳上の姉で、しっかり者だが弟のドジっ子ぶりを愛情深く見守っている。
駿は温和な性格の義兄で、真二の活躍を応援している。
「空に浮かぶ島? 真二、めっちゃ面白そうじゃん!」と優が目を輝かせる。
駿が苦笑しながら。
「でも、君、絶対変なことに首突っ込むから気をつけなよ」
真二は駿の言葉に笑いながら。
「でもさ、なんで俺に招待状が?」と真二が首を傾げると、駿が笑いながら言う。
「真二君の正直なとこ、誰かにバレたんじゃない? ほら、髪の毛カエルの記事とか、妙なとこで目立ってるしさ。行ってみなよ。なんか面白そうなこと、絶対あるって」
「うーん、そうかな…でも、なんかワクワクするな!」
姉と義兄に背中を押され、真二の心は決まる。
「よし、行くぜ! 島での出来事全部記事にしてやる!」
翌日、真二は招待状に記された飛行船で『ストロールグリーン』へ向かう。リュックにはノート、ペン、ノートパソコン、カメラを詰め込んでいた。
飛行船の窓から見える青い空と白い雲、遠くに浮かぶ緑の島々に胸が高鳴る。
真二の頭の中は、島でのスクープで記者人生を変える夢でいっぱいだ。最近の仕事では、この『ストロールグリーン』ではなにか記者として人間としての何かが掴めると直感しており。ノートパソコンに『Welcome to Stroll Green』と見出しを作り真二は冒険の第一歩を踏み出すのだった。
真二の正義感が瞬時に火を噴く。「いや、今のあんたが悪いだろ!?」と、ノートを握りしめながら事故現場に突っ込んでいく。お人好しで正義感の強い彼にとって、理不尽な怒鳴り声は看過できない。
「関係ないやつは黙ってろ!」と追突側の運転手が真二に詰め寄るが、真二は一歩も引かず、「いやいや、信号赤だったじゃん! ちゃんと見てたんだから!」と反論。だが、怒り心頭の運転手は真二の胸ぐらを掴み、頬を殴った。真二の頬に青あざができ、よろめきながらも「暴力はダメだろ!」と叫ぶ。
騒ぎを聞きつけた警察が到着し、事情聴取が始まる。真二は「記者として真相を確かめたかっただけです!」と訴えるが、警官には「あなた、関係者じゃないですよね?」と呆れられ、解放されたのは8時40分。始業時間の9時まであとわずかだ。
編集長との電話
走りながら真二はスマホを取り出し、編集長の佐藤亮太に電話をかける。亮太は真二の大学の先輩で、ORANGEジャーナルで彼を半ば無理やり引き受けた人物だ。
「編集長! すみませんでした、遅刻です!」
「またか、真二。今度はなんだ? 寝坊か?」
「違います! ちょっと…交通事故に…」
「は!? お前、大丈夫か!?」
亮太の声が心配に変わるが、真二が「他人の事故に首突っ込んだらこうなっちゃって…」と説明すると、長いため息が聞こえる。
「…お前、ほんとバカだな。なんで毎回そうやって突っ込むんだよ。いいから9時半までには来い!」
「分かりました!」
真二は青あざをさすりながら、雑居ビルのオフィスへ全力疾走する。
9時25分、ORANGEジャーナルのオフィスに滑り込む真二。雑多な部屋には、コーヒーの染みが染みついた編集長のデスクと、壁に貼られた過去のスクープ記事が目に入る。亮太はコーヒーカップを手に、真二の青あざを見て苦笑いする。
「顔、ひでえな。ほんとバカだろ、お前」
「でも、編集長! あの事故、なんか裏が…」
「はい、ストップ。いつもそれで話が脱線するんだよ」
亮太は話を遮りつつ、ふと笑みを浮かべる。
「そういえば、真二。この間の『髪の毛が生えたカエル』の記事、ネットで結構話題になってるぞ。バカバカしいけど、読者が食いついてる」
真二の顔がパッと輝く。
「マジっすか!? やった! あの変なカエル、絶対スクープだと思ったんですよ!」
その記事は、真二が近所の老人が飼っていた奇妙なカエルを、半ば冗談で書いたものだったが、かなり話題になっていた様だ。
亮太はデスクから一通の手紙を取り出し、真二に放り投げる。
「で、これ。お前宛に届いてたぞ」
封筒には、真二の名前が丁寧な筆跡で書かれている。開けると、空に浮かぶ島『ソラニワ』の『ストロールグリーン』への招待状が出てきた。
「素敵な庭園をオープンしました。
ここは、周囲すべてが空という空間の中に浮かんでいる、一つの島。
広々とした世界と豊かな自然。冒険の疲れを癒やすのにぴったりです。
良かったら、ぜひお越しください」
真二は目を丸くする。
「…空飛ぶ…島?それになんで俺宛なんだろう?」
不思議そうに首を傾げる真二に、亮太は肩をすくめる。「さあな。お前のバカみたいな正義感が、誰かの目に留まったんじゃねえの? まあ、お前の突っ走る性格なら、こんな変な島、ちょうどいいだろ。行ってこい。ガツンと読者を掴む記事、期待してるぞ」
その夜、真二は姉の優と義兄の駿が住むアパートを訪ね、招待状の話を切り出す。美咲は真二の2歳上の姉で、しっかり者だが弟のドジっ子ぶりを愛情深く見守っている。
駿は温和な性格の義兄で、真二の活躍を応援している。
「空に浮かぶ島? 真二、めっちゃ面白そうじゃん!」と優が目を輝かせる。
駿が苦笑しながら。
「でも、君、絶対変なことに首突っ込むから気をつけなよ」
真二は駿の言葉に笑いながら。
「でもさ、なんで俺に招待状が?」と真二が首を傾げると、駿が笑いながら言う。
「真二君の正直なとこ、誰かにバレたんじゃない? ほら、髪の毛カエルの記事とか、妙なとこで目立ってるしさ。行ってみなよ。なんか面白そうなこと、絶対あるって」
「うーん、そうかな…でも、なんかワクワクするな!」
姉と義兄に背中を押され、真二の心は決まる。
「よし、行くぜ! 島での出来事全部記事にしてやる!」
翌日、真二は招待状に記された飛行船で『ストロールグリーン』へ向かう。リュックにはノート、ペン、ノートパソコン、カメラを詰め込んでいた。
飛行船の窓から見える青い空と白い雲、遠くに浮かぶ緑の島々に胸が高鳴る。
真二の頭の中は、島でのスクープで記者人生を変える夢でいっぱいだ。最近の仕事では、この『ストロールグリーン』ではなにか記者として人間としての何かが掴めると直感しており。ノートパソコンに『Welcome to Stroll Green』と見出しを作り真二は冒険の第一歩を踏み出すのだった。