Eno.465 アレイスタ  ある少女の手記 - はじまりの場所

ある日世界に色が増えた。
今までだって世界は色とりどりだったのに、それは新しい色。

魔法生物や魔道具に込められた魔力がきらきらと見えるようになった。
それだけじゃない、空は草は木々は花はこんなにきらきらしていたのか。

兄ちゃんに話すと綺麗に見えるなら羨ましいと言ってくれた。
じいちゃんに話すと良かったと同時に内緒にするようにと言われた。

これが、魔力のある人間の視界。
価値のある人間の世界。

私は少し浮かれていた。
だって、習うことができれば魔法が使えるようになったのだ。
けれど、じいちゃんに魔法を習いたいと言うと困った顔で

「チェリアはなんで魔法が必要なんだい?」

そう尋ねてきた。
使えるようになれたら便利だろうし、
大好きな兄ちゃんやじいちゃんの役にもっと立てるようになりたいと、そう答えた。

「もっと魔法を使ってこうしたいと、具体的に答えられるようになるまでは必要ない」

「どうして?
 何ができるようになるのかそれを知ることから始めないと
 具体的なことなんて想像すらできないのに」

何度言っても何日たってもじいちゃんは頷いてくれなかった。
私は拗ねて、頭を冷やすと言いながら一人で少し遠くまで散歩に出た。

「チェリア!」

呼ばれて振り向くと、私を嫌いな母がいて。

「久しぶりね。
 話は聞いているわ
 迎えに来たの」

じいちゃんは、娘である母に、私たち兄妹を捨てた母に相談をしたらしい。

自分は魔法が好きではないから詳しくない。
もしチェリアがどうしても魔法使いを目指したいなら、力になってやってくれないかと。

私はじいちゃんが魔法が嫌いなことを知らなかった。
だって魔道具である店の車もそこにある保管庫もじいちゃんが買ったものだったから。

私たち兄妹のためだなんて知らなかった。
私のために音信不通だった母に連絡を取って頭を下げたなんて知らなかった。

私は馬鹿だ。
兄ちゃんやじいちゃんの作るクレープもジュースも昔からずっときらきらしていたのに。
魔法なんて習わなくても、特別なものが作れることに気づいてなかった。

ごめんね、じいちゃん、兄ちゃん。
また会いたいよ。
もう、遅いのかな…。








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