Eno.442 巫伽 惺&鈴  私は - はじまりの場所

 結局、あいつを助けてしまった

 かつての親友と一緒だったなら、止められるわけがなかった

 そのせいで私は弱いまま、何も出来ないままだった


 ツルバミの捜索を終え、数日が経った

 新月の再現は上手になってたはずなのに
 静空には日を追うごとに嫌われる事が増えた

 きっと細かい部分が似てないんだ
 大丈夫。全部直せばきっとまた静空と話せる

 大丈夫。私の再現がまだ足りないだけ
 ちゃんと新月になれたら、こんな想い背負わなくて済む

 大丈夫。拒絶されるのは仕方ない事だから

 静空を守れてた頃の強い新月にならなきゃ
 鈴に愛されるかっこいい新月にならなきゃ

 大丈夫。明日はもっと上手になる
 再現も慣れてきた。「もう母さんの真似をやめろ」なんて言われたくらいで
 今の私はもう、泣いたりなんか

 あれ

 息が、

 なんでこんな息が苦しいんだろう

 大丈夫なはずなのに、涙が止まらなかった
 何が痛いのかもわからないまま崩れ落ちて行く

 新月はこんな時泣かなかったはずだ
 新月はこんな時痛まなかったはずだ
 新月はこんな時「抱きしめられたい」なんて思わないはずだ

 それなのに、私は
 泣いてしまう。痛んでしまう
 今すぐ鈴に抱きしめてもらいたいと思ってしまう

 こんな私じゃ鈴は優しくしてくれないのに、鈴が恋しくて苦しい

 ひとしきり泣いて、それから、意識が遠のいて

 私は、新月あのこになれないのだと突きつけられた








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