Eno.233 Laszlo Ambros <4> - はじまりの場所

「冒険者を名乗る賊が屋敷を襲いました。」

「夜警はほぼ討たれ、領主様を剣を取り応戦していますが、
長くは持たないでしょう。火の手もすぐ回ります。」
「……」

「…領主様に、…旦那様に、申し付かりました。
腹の子を生かせと。」

「………あなたも一緒に行きましょう?■■。」

「物乞いに来たあなたを使用人として雇うようお願いしたのは私です。
あの人の子も、そしてあなたも。失いたくないんです。」
「……
それは出来ません、奥様
私にもまだ、役目がありますから」
「アイツらを手引きしたのはこの俺です、奥様」

「…」

「うまい飯とあたたかいベッドをどうもありがとう。
ふた月の間、お世話になりましたぁ♡」
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昨日、草笛を教えてくれた村の子がそこに転がってる。
みんなと話した井戸が焼け崩れて、
気前よくパンを分けてくれたおばさんが、震える声で命乞いをした。
聞いてるのは俺。
踏みにじって奪って、自分が生きるため殺す。 それが仕事。
いい子だったと思う。
家の為に故郷を離れた遠い土地に嫁ぎ、
ふた周りも歳の違う男に尽くし、立派に領主の妻を演じて、前向きに愛情を育んでた。
4つ年上のおねーさん。はじめての
罪悪感ってんじゃないけど、、おねーさんの顔はよく覚えてる。

「どうせだったらこーいうキレイなメイド服で働きたかったなぁ~」

「あ、でも絶対屋敷の警備めんどくさい。
じゃあ貧乏領主でよかったわ」