Eno.71 ミシバ・シノミヤ 【回想】花の少年 - はじまりの場所
それは、ウチが『はじまりの場所』を散策していた頃の話やった。
誰かさんの悲鳴が聞こえた。
その方向を見れば、たくさんのひつじが何かを囲んどる。悲鳴はその中心からやった。
ウチはそいつを助けることにした。
ウチがひつじの群れを左右に割って退かすと、
中にはピンクの花を頭に付けた人間の少年が震えとった。
心配して声掛けてみたら、その子がウチにぎゅーっと抱き着いてきた。
少年は首を縦に振ってから、横に振った。
ウチが反射的に怒鳴ると、少年はわかりやすく縮こまった。
すぐ敬語になった。いい子や。
『コハル』やて。頭の花と同じくらいかわええ名前やな。
ともかく、ここでの彼のことはウチが面倒を見ることした。
この子がたくさんの花々が咲く場所で、どんな成長をしてくれるか、楽しみや。
???
「た、助けて~!!」
「た、助けて~!!」
誰かさんの悲鳴が聞こえた。
その方向を見れば、たくさんのひつじが何かを囲んどる。悲鳴はその中心からやった。
ウチはそいつを助けることにした。

ミシバ
「あんたら退きや~。怖がっとるやつおるやろ!」
「あんたら退きや~。怖がっとるやつおるやろ!」
ウチがひつじの群れを左右に割って退かすと、
中にはピンクの花を頭に付けた人間の少年が震えとった。

ミシバ
「坊や、ケガしてへん? 大丈夫か?」
「坊や、ケガしてへん? 大丈夫か?」
コハル
「……!」
「……!」
心配して声掛けてみたら、その子がウチにぎゅーっと抱き着いてきた。

ミシバ
「うおおっ!?」
「うおおっ!?」
コハル
「わわっ、ごめんっ!」
「わわっ、ごめんっ!」

ミシバ
「……別に構わんて。怖かったやろ。
で、あんたも観光客なん? 親御さんは?」
「……別に構わんて。怖かったやろ。
で、あんたも観光客なん? 親御さんは?」
少年は首を縦に振ってから、横に振った。
コハル
「おれはひとりで来たけど……大丈夫!
おつかいだって、ひとりでできるし!」
「おれはひとりで来たけど……大丈夫!
おつかいだって、ひとりでできるし!」

ミシバ
「さっきの見た限り、信用ならんわぁ~。
よかったらウチがついていこか?」
「さっきの見た限り、信用ならんわぁ~。
よかったらウチがついていこか?」
コハル
「ありがとう! 子ども同士だけど……ふたりなら安心だよね!」
「ありがとう! 子ども同士だけど……ふたりなら安心だよね!」

ミシバ
「ウチは子どもちゃうわー!!」
「ウチは子どもちゃうわー!!」
コハル
「ひええええっ!?」
「ひええええっ!?」
ウチが反射的に怒鳴ると、少年はわかりやすく縮こまった。

ミシバ
「あ! すまんて。
ウチはこれでもあんたの母ちゃんか、それ以上生きとるんや。
他人を見かけで判断せんとき!」
「あ! すまんて。
ウチはこれでもあんたの母ちゃんか、それ以上生きとるんや。
他人を見かけで判断せんとき!」
コハル
「ご、ごめんなさいっ!」
「ご、ごめんなさいっ!」
すぐ敬語になった。いい子や。

ミシバ
「それで坊や、あんたの名前は? ウチは『ミシバ・シノミヤ』言うんよ」
「それで坊や、あんたの名前は? ウチは『ミシバ・シノミヤ』言うんよ」
コハル
「『曇屋 心陽 』です。よろしくお願いします、シノミヤさん!」
「『

ミシバ
「『ミシバ』さんでええよ。そこまで硬くせんでも。
ウチのことは近所の姉ちゃんみたいなもんと思いや!」
「『ミシバ』さんでええよ。そこまで硬くせんでも。
ウチのことは近所の姉ちゃんみたいなもんと思いや!」
ミシバ
「ほな……よろしくな、コハルはん!」
「ほな……よろしくな、コハルはん!」
コハル
「うんっ!」
「うんっ!」
『コハル』やて。頭の花と同じくらいかわええ名前やな。
ともかく、ここでの彼のことはウチが面倒を見ることした。
この子がたくさんの花々が咲く場所で、どんな成長をしてくれるか、楽しみや。