Eno.504 幸運の死神  とある死神の昔話(4) - はじまりの場所

『また一人、見送ってきたぞ。
 ずっと取り乱してたが……最後は安らかなものだったな、うん』


            『おう、お疲れ。
             つかお前、その喋り方止めろよ、高貴な者かよ』


『何か死神っぽくないじゃん。
 おじさんこそもう少しそれっぽい振る舞いしてよ』


            『なんだお前、このフレンドリーさが
             死んでいく奴の前に現れた時、すんなり受け入れられるコツなんだぞ』


            『……なあ』


『気持ち悪いと思うけど……何』


            『俺の事、恨んでたりしねえ?
             お前がこのまま死ぬのは何か、違うと思って
             引き込んじまったけどよ。面白い仕事じゃねえだろ、コレ』


『別に恨んでないよ。
 元の暮らしよりはマシだし……お母さんにももう一度会えた』


            『……楽しくねえって言われないと、
             俺は楽しくねえしそろそろ辞めてえって言い辛いだろ』


『知らないよ。辞めればいいじゃん。
 おじさんが真っ当に生きる気になったなら、
 私も辞めて面倒見てあげてもいいよ』


            『……いやぁ、悪いんだが。
             "死神"を辞める事自体は、お上も別に咎めたりはしてないんだけどな。

             その時には"死神"になった事で得た物は、全部返さなきゃなんねえ。
             お前が拾った命もだ』


『……はぁ』


            『……だから、恨まれてるんじゃねえかってな。
             あのまま死なせたくないって俺のエゴで、
             お前は永遠に近い時を生きながら、ずっと生物の死を見届けていかなきゃならなくなった。

             だからよ……』


『……別に、それでも恨んでない。
 あの時、ああ、自分は死ぬんだって思った時、
 おじさんとお話して、ちょっと楽しかったし。

 私もあんな風に、死を前にした人に少しでも安らかな……


 ……おじさん?どうしたの』


            『……だぁから。
             恨み言の一つも言ってくれねえと……
             "もう辞めてきた"、って……言い…………』


            『……』









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──



『ああ、起きたか、おはよう。

 早速なんだが、お前はそう遠くない内に死ぬ。
 まあその体調じゃあ、長生きするとも思ってなかっただろうが……』


『私?私は"死神"だ。
 
 ……いや、違う違う。私がお前を殺しに来た訳じゃあない。
 何、死ぬ事は避けられないが──』


『その時まで、退屈しないように、と思ってな』



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