Eno.504 幸運の死神  とある死神の昔話(3) - はじまりの場所

お腹に受けた傷を押さえながら、何とかねぐらに逃げ戻ったベルでしたが。
そこには子分の子供達は居ませんでした。耳付きの大人達のひそひそ話によれば、
兵士達が悪さをする子供達の集団を捕まえてしまうために乗り込んで来たのだと。

……せめて、捕まらずに逃げおおせた子が一人でも居ればいいのですが。
そんな事を考えながら、誰も居ない路地裏の隅に、ベルは座り込みました。



──此処には薬も、お医者さんも、まして癒しの魔法が使える様な人も、ないない尽くし。
日に日に弱っていくベル。ご飯も探しにいけず、穴の空いたお腹がぐうぐう鳴っています。


ああ、私はここで死ぬんだな。


静かに目を閉じ──


ようとした時。目の前におじさんが座り込んで、自分の顔を覗き込んでいるのが見えました。




──おじさん、誰


           おじさんとはご挨拶だな、ギリお兄さんでもいいだろ──


──どうでもいい


           そう、どうでもいいな。おいガキ。俺はお前が死にそうになった後しか
           見てないから事情は分からネんだが、何で死にそうになってるんだ──


──おじさんには関係ない


           ……その大事そうに握ってる、値札も付けたままの人形か?
           何だってそんな薄汚れた……いやここまで汚れたのは盗った後か。
           どうしたんだよ。盗むんだったらもっとこう、パンとかじゃないのか──


──……から


           あん?何だって──


──お母さんに、似てたから


           ……あー、
           あー……ああ。何かごめん、悪い──


──何で謝ってるの、ヘンなの


          ああ、まあ……なあ。
          お前、こんな所でこんな事してるんだから、やる事無いんだろ──


──無いけど、そもそもすぐにでも死にそう


          いいから聞けって。
          お前……おじ……お兄さんの仕事手伝ってみねえか──


──おじさんの仕事って何。幼女話しかけ師?


          ──


            ──





          『死神』──








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