Eno.504 幸運の死神  とある死神の昔話(1) - はじまりの場所

昔々、のお話です。

その国では、王様を暗殺した者が出た事で、
けものの耳を持つ種族達が虐げられ、疎まれていました。

ベルは、そんな国に生まれました。
お父さんは、どこに居るのか、生きているのかも分からない。
お母さんはいつも『お前の所為だ』『お前の所為だ』と言い、
物心付いた頃から、ベルを可愛がってくれる事はありませんでした。

それでも、自分を育ててくれているのだからと。
何をされても、言われても。ベルはお母さんの事が大好きでした。


──でも。
ある日。ベルがお使いを終えて、大きな荷物を持ってお家に帰ってきた時に、
お母さんは言いました。

『やっとここまで育った』
『お前を買ってくれる人間様が見つかった、支度をしろ』
『お前の唯一の親孝行は、お前がメスだった事だよ』と。

ベルだって噂ぐらい聞いた事があります。
お金持ちの人間様が、何をしても罪に問われる事のない耳付きを買って飼い、
時には狩りと称して庭に離し、銃を持って追い掛けたりする事すらあるって。

でも、ベルが一番傷付いたのは。
もうお母さんと一緒に居られない事。

そして、悪態を付いていても自分を育ててくれているお母さんには
家族なら当たり前に持つ情を自分に持ってくれていると思っていたのが、そうでも無かった事。



──ベルは、お使いの荷物を放り投げ、家を飛び出し。

タイトル
走りました。どこまでも、どこまでも──








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