Eno.30 ライオネル=ロア=ルミナス 陰が静かに嗤えば。ー第1話ー - はじまりの場所

時計の針が心地よく響く。
部屋の壁を照らすオレンジ灯は明るくなく。
「……この島との契約は……いや、最近はご無沙汰だしな……。」
ペンを握り、机に広げる書類を睨みながら呟く。
そんな獅子は海賊団の会計士。
ベースをテーブルの傍らにスタンドに置いておき、積み重なる書物と計算機。
そんな部屋にブーツが床を軋ませる音が聞こえる。
どいつだろう、と顔を上げればそこには。
『お疲れ様です、ルミナス様。』
鼓膜の奥に響いてくるそんな声の持ち主、副船長のアウィードだ。
微笑みも作らないそんなぶきっちょな顔がこちらを見つめる。
『何か、お手伝いにでもとお伺いに来たのですが。いかがでしょう。』
そんな彼の手元には多くの大きな紙類。
クク、と喉から笑いが出る。
「大丈夫だ、急ぎのものも無いしな。」
「それより、ウィードも色々持ってるじゃないか。」
歯を見せ笑うそんな顔を彼は見つめる。
『……しかし。』
表情が変わらないはずだが、声はほんのりと。
『しかし、普段より眠そうに見えますが。』
眠そう?そんなこと……。
「……そうだな、少し作業が続きすぎたのだろう。」
「これだけ終わらせたら、休むから安心しろ、な。」
『そう、ですか……。』
そういえば、この島に来てから再び強い眠気が襲うようになってきたな。
なぜだろう、あんなに抑えることが出来ていたのだが。
……きっと、気のせいだろう。疲れてるんだ。
休めば、次起きた時、元気に。
光になれるはず。