Eno.101 ピーピャ・メルシア 『白百合の悪魔憑き Ⅴ』 - はじまりの場所
気付けば誕生日が過ぎていた。
うっかり忘れていた、と独り言をつぶやいたらなんかめちゃくちゃお祝いされた。
そんなつもり全くなかったのに。
貰えるものは貰える精神だから貰うけれど。
正直自分の誕生日はあんまり好きじゃない。
正しくは、「お祝いされること」が好きじゃない。
神に選ばれた子、だと称して過剰に私の誕生を祝った。
誕生日もそうだ。まるで神に祈りを捧げるかのように、
両親も含め、私を熱心に祝福した。
私はここの信仰に違和感を抱いたときから、真理を暴いて未来を壊すことしか考えていなかった。
この村にある信仰は歪なのだと、声を張り上げるつもりだった。
良い子のフリをするのはさぞ息苦しかった。
ましてや、救済を望んで私を持ちあげて、私に彼らは裏切られたのだ。
ここでのお祝いは、そういった意味がないから。
その分、気楽と言えば気楽だったんだけども……
…………
ロクでもないお祝い結構なかったか???
俺達の生まれ育った村ではある土着信仰が存在した。
神は花を通じて人に加護を与え、我々は加護に報いる生を謳歌しなければならない。
加護に報いる生き方をしていれば、神が認めてくださり楽園へと導いてくださる。
故に我々は法力を使い奇跡を起こし、神に認めてくださる日を待ちわびているのだと。
村には大きな花壇があり、四季折々の花が咲き誇っていた。
そこは種や球根、刺し木などを行えば、
土壌や植物の性質を無視して1年の内で数日から一か月程度、花を咲かせた。
最も、殆どは一度植えれば種や球根を残し、咲いては枯れてを繰り返していたのだが。
生まれてきた子供には、その花壇で同日中に咲いていた花を1つ摘み取り、お守りとして与えた。
花は神の加護により枯れることはなく、信仰する者に火や水などを具現化する法力を与えた。
いくつか種類が咲いていて、与えられる花はその中から親が決めた。
俺は姉貴とお揃いの百合が咲いていたから、それに合わせて百合を与えられた。
姉貴が生まれたその日。
咲いていた花が地に落ちて、咲くであろうつぼみは花開かずに。
一本の黒百合が、生まれ出ずる子との逢瀬を待ちわびたように咲いていたのだと聞いた。
黒百合の花言葉は、「愛」「恋」「呪い」「復讐」。
うっかり忘れていた、と独り言をつぶやいたらなんかめちゃくちゃお祝いされた。
そんなつもり全くなかったのに。
貰えるものは貰える精神だから貰うけれど。
正直自分の誕生日はあんまり好きじゃない。
正しくは、「お祝いされること」が好きじゃない。
神に選ばれた子、だと称して過剰に私の誕生を祝った。
誕生日もそうだ。まるで神に祈りを捧げるかのように、
両親も含め、私を熱心に祝福した。
私はここの信仰に違和感を抱いたときから、真理を暴いて未来を壊すことしか考えていなかった。
この村にある信仰は歪なのだと、声を張り上げるつもりだった。
良い子のフリをするのはさぞ息苦しかった。
ましてや、救済を望んで私を持ちあげて、私に彼らは裏切られたのだ。

ピーピャ
「一体どんな気持ちかしらねえ」
「一体どんな気持ちかしらねえ」

ピーピャ
「『私』を象徴とする花のように、滅びを与えられた気分は」
「『私』を象徴とする花のように、滅びを与えられた気分は」
ここでのお祝いは、そういった意味がないから。
その分、気楽と言えば気楽だったんだけども……
…………
ロクでもないお祝い結構なかったか???
俺達の生まれ育った村ではある土着信仰が存在した。
神は花を通じて人に加護を与え、我々は加護に報いる生を謳歌しなければならない。
加護に報いる生き方をしていれば、神が認めてくださり楽園へと導いてくださる。
故に我々は法力を使い奇跡を起こし、神に認めてくださる日を待ちわびているのだと。
村には大きな花壇があり、四季折々の花が咲き誇っていた。
そこは種や球根、刺し木などを行えば、
土壌や植物の性質を無視して1年の内で数日から一か月程度、花を咲かせた。
最も、殆どは一度植えれば種や球根を残し、咲いては枯れてを繰り返していたのだが。
生まれてきた子供には、その花壇で同日中に咲いていた花を1つ摘み取り、お守りとして与えた。
花は神の加護により枯れることはなく、信仰する者に火や水などを具現化する法力を与えた。
いくつか種類が咲いていて、与えられる花はその中から親が決めた。
俺は姉貴とお揃いの百合が咲いていたから、それに合わせて百合を与えられた。

ピーピャ
「記憶にないから真実は分からないけれど、
私のときは面白かったらしいわよ」
「記憶にないから真実は分からないけれど、
私のときは面白かったらしいわよ」

ピーピャ
「本来は数種類、数十種類と花が咲いているはずなのに、
私が生まれたときは1輪だけしか咲いていなかったらしいの」
「本来は数種類、数十種類と花が咲いているはずなのに、
私が生まれたときは1輪だけしか咲いていなかったらしいの」

ピーピャ
「前日や次の日にはたくさんの花が咲いていたから、
神による絶対の意志だ、だとか、神に選ばれた子だ、だとか。
色々言われたのよ」
「前日や次の日にはたくさんの花が咲いていたから、
神による絶対の意志だ、だとか、神に選ばれた子だ、だとか。
色々言われたのよ」

ルーク
「俺もめちゃくちゃ聞かされたぜ。
村のやつら、皆自慢げに話してやがったし」
「俺もめちゃくちゃ聞かされたぜ。
村のやつら、皆自慢げに話してやがったし」

ルーク
「姉と比べて弟ときたら、って何回言われたか分かんねぇや」
「姉と比べて弟ときたら、って何回言われたか分かんねぇや」

ピーピャ
「あなたはすぐに暴力で訴えるから出来損ないって言われてたのよ」
「あなたはすぐに暴力で訴えるから出来損ないって言われてたのよ」

ルーク
「だっ、だってあいつら俺のこと好き勝手言いやがって!
ムカついたんだよ!
腕っぷしだったらだぁれも俺に勝てねぇクセにさ!」
「だっ、だってあいつら俺のこと好き勝手言いやがって!
ムカついたんだよ!
腕っぷしだったらだぁれも俺に勝てねぇクセにさ!」

ピーピャ
「そういう短絡的なところは少なからず原因だということは自覚しなさい」
「そういう短絡的なところは少なからず原因だということは自覚しなさい」

ピーピャ
「……ムカついてたのは私もだけどね」
「……ムカついてたのは私もだけどね」

ルーク
「…………」
「…………」

ルーク
「ぶっちゃけ姉貴の方がやばいことをやってのけ」
「ぶっちゃけ姉貴の方がやばいことをやってのけ」

ピーピャ
「あーあー きこえなーい」
「あーあー きこえなーい」
姉貴が生まれたその日。
咲いていた花が地に落ちて、咲くであろうつぼみは花開かずに。
一本の黒百合が、生まれ出ずる子との逢瀬を待ちわびたように咲いていたのだと聞いた。
黒百合の花言葉は、「愛」「恋」「呪い」「復讐」。