Eno.133 兎耳天使ラビト  学んだこと1 - はじまりの場所

 ルピシラから恋バナを聞かせてもらった。
 思いの外、話を聞いていてどきどきしちゃった。
 恋の話にときめきを覚える機能が自分に備わっていることに心底驚いた。
 動揺するあまり、素の口調が出てしまった。

 彼女はとても幸せそうで、きらきらに満ち溢れていた。

 ……おれは、男性と女性、どちらの視点で聞いていただろうか?
 女の姿になっていた(男の姿では女の子に声をかけづらい。ナンパだと思われたら嫌だし……)し、語り手が女性だったこともあり、女性寄りの視点で話を聞いていたかもしれないし、そうでもなかったかも、しれない。いや、うーん……。

 また、素敵な男性というものに憧れはするものの、自分がそうありたいのか、それとも女性として男性に愛されてみたいのか。はっきりしない。
 もしおれに、誰かに恋をする機能があったとして、恋愛対象はどっちなんだろうね。

 何にせよ、話を聞いていて、憧れたし楽しかったのは確かだ。
 それに、普段は男の姿でいることが多いから、女の子の姿で女子会っぽいノリで話をするというのは随分と久々だった。
 天界で暮らしていた頃以来だったかも。
 楽しかった……。
 


 元魔王の青年と友達になった。
 身長ちょっと分けてほしい。3cmくらい。っていうのは冗談だけどさ。

 彼のノリの良さや親しみやすさには救われた。
 と思うと同時に、おれって人肌に飢えてたんだなと自覚した。

 天界にいた頃は、天使同士でよくスキンシップをしていたものだった。
 天使の中でも、おれのような動物の要素が組み込まれているタイプは、スキンシップを好む傾向がある。
 動物の種類にもよるけれど、おれは兎だからか、その傾向が比較的強かった。

 地上に降りてからは、他人と触れ合う機会は随分と減った。
 人間って、スキンシップには慎重にならなきゃだし。
 天使の社会とは距離感の感覚が違っていて、戸惑うこともあって。
 おれは他人とスキンシップを取ろうとしなくなり、ぬいぐるみを抱きしめてばかりになった。

 途方に暮れてるおれの背にそっと触れて、慎重に言葉を紡いでくれたことが嬉しかった。
 寄り添ってくれたことに心が暖かくなった。

 ……神様は、おれに『他の天使達にはあり、お前にはまだないものがある』と言った。
 愛への理解を深めて、それを得なければ、おれは天使として復帰できない。
 おそらくそれは、彼に言われた通り「誰かを実際に愛すること」、即ち博愛主義のおれが誰かに偏愛を向ける経験。
 もしくは、それに付随する何かしらである可能性が、高い。

 気が重くなるけれど……いいや。考え込んでも仕方がないよね。
 彼が言ってくれた通り、今はゆっくり観光しよう。
 気長に構えて、この島での生活を満喫したい。

 お茶会楽しみだな~~!








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