Eno.52 LReaper  記録④:ある親友の内緒話、いつも置いていかれる樹の男。 - はじまりの場所

トーゴ
「マイト、来たぞ。……まだやってるのか。」

麻糸
「あら、よく来たわね。」


あまりにも多くを失った麻糸は、実家に引き取られて、研究職に戻っていた。
……使える時間を全て、いなくなった夫と死んだ子供たちの『捜索』にあてながら。

麻糸
「ネクロワークス社の記録は手を出せなかったけど、関連団体の記録は残ってたの。近い髪色の子供の記述があってね、」

トーゴ
「なあ、もういいだろう。……もうあれから30年経つんだぞ。
 30年探し続けて、見つかってないんだ。」

トーゴ
「……ちゃんと認めて、弔ってやってくれ。
 もうあの子たちは、この世にはいないんだから。」

麻糸
「…………」




麻糸
「……そうよ、それだわ!
 『この世界にいない』なら!『外の世界にいる』のよ!」

トーゴ
「外世界?……まさか、
 本気かお前、異世界渡航は極刑モノの大罪だぞ!?」

麻糸
「あの子たちが戻るなら構わないわ!」

トーゴ
「……お前、やめてくれよ、」


言葉を続けようとした時には、もう麻糸は俺の声を聞き入れる状態にはなかった。
麻糸の魂/瞳、藤紫の能力……『解を導き出す』能力。
間違いなく思考を巡らせる代わりに、外部からの刺激をシャットアウトする。
結論が出るか、材料不足で止まるまで、もうこちらの声は届かない。




「……麻糸」

「お前も俺を置いていくのか?」






数年後、麻糸の実家から「麻糸が失踪した」と連絡があった。
俺は何も言わなかった。








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