Eno.245 AL-000 フレデリック  時は溢れ始める - はじまりの場所

製造記録300年目

フレッド
何故だ!!?何故人が居ない!!?


夢の世界に入ってからというもの、人間達が見当たらない!!。
夢を階層状にしたのだろうかという考察も含め、一つ一つの空間隈なく探したというのに!?。

震える白い鉄の塊の鼓動を抑え、微かに残った痕跡を辿ることにした。
辿る途中、そこで我の頭の中に、黒い花が咲いた。咲いてしまった。

人間達は夢の中でも争ったというのか?、トップ人間代表がいるにも関わらず?
思えばこの痕跡の後は銃火器に臭いや、酸化した鉄の臭いを模倣している。

もしかしたら人間達の意識は、夢の世界の先、次元の向こうに行ってしまったのではないか?
人間の意識体が次元の中にある夢の世界に出てしまえば、どこに流れ着くのかも分からない
少なくとも、夢の世界から無断で出てしまえば元の世界に帰る事なんて出来ない。

何故?なぜトップは止めなかった?なんでだ?頼む、何故か教えてくれ!。

痕跡の跡の先には夢の世界の穴があった。

正気を失いかけ震える視線の先に、取り残されたかのように置かれていた記録があった。
頼む、無事であってくれと思いながら記録を読んだ。











長々と書いてある記録には書いてあったことをまとめてみた。

夢の世界で、現実世界で居場所を持てなかった者たちが
人が作った居場所を羨みを奪う者となり、争いが起きてしまったこと。』


『夢の世界の住人たちは、奪う者に対抗するために「守護派」と「再構築派」に分裂し、
最後にトップ人間代表が率いる守護派がその争いを制したが。
現実世界に行くために、無理やり夢の世界から出てしまったこと。』


『その夢の世界から無理やり出たことにより、夢の世界に穴が開いてしまい
夢の世界に存在していた人々の意識が穴に吸い込まれ、それを見た人々は現実世界に戻ると理解し
その穴に飛び込む者も居たり、吸い込まれるまで待つ者が居たこと』


『最後になった夢の世界の住人は、この記録を残し、吸い込まれていったこと。』

そんな上手い話なんてあるわけない

夢の世界は次元の狭間で作った空間なのだ、夢の世界から出れば次元の彼方に放り出されるだけなのだから













嗚呼、何故、なぜ そんな、 われは わたしは そんなはずでつくったのでは なぜ?。

せんそうはおわってなかったのだ。せんそう。
ははっ。ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは              ははははは   ははははははは                 は。




だ リーモードにしよ しばらくは めだ






製造記録800年目


我はこの地球に住み、人間達の為に作ったアミューズメントで、一人で17241回ビリヤードをしている。
地球が存在している間、人間の代わりにこの地球を楽しむことにした。

まずは人間達に近づく為に味覚を理解する機能を入れる事にした
そして、遊ぶ事を楽しむ喜怒哀楽を強調する事にした。

アミューズメントパーク、それともサイバーパンクな都市。
おいしいご飯に、皆がぐっすり眠れる素敵なお家。

どれも楽しかった、やはり我は人を導く機械竜なのだと理解した。
…だが、そこに人は居なかった。

庭園は複数人遊ぶ前提の施設なので遊ばずに、ただただ植物を育て、観賞用の施設にする事にした。
一番のお気に入りだけに、本当に心苦しいが…取り壊す事は出来なかった。

ビリヤードを楽しみ、ソファに座っている間に、あの時の記録を思い出す。

思えば夢の世界を泡のような構造にして、各々に世界を作ってもらうのが良くなかったのかもしれない。
地下空間で暮らした時と同じ階層式にして、無理やりにでもいいからそこに住んだ方が良かったかもしれない。
それならいっそのこと、コールドスリープは止めにして普通に住んでもらうのもよかったかもしれない。

だが、きっと、それでも争いは起きていたのだろう
結局争って、資源不足に陥って………。

……結局、知らず知らずに次元の彼方に吹き飛んだ事に気づかず、
人として死ねるのならよかったのだ、勝利を勝ち取って、だが最後に間違ってしまった。




だからこそ人が好きだったのだ、人は間違わないはずなんてない、間違いは誰にだってある

何もしないで空を見上げるよりも、自分たちの空を追い求めて、必死に努力して力尽きる

我ら機械としては絶対にできない選択だ、本当に愚かでどうしようもないくらい愛しい人間達




…正直ショックだった、我は人間達の隣に立てなかった事に。
もっと、もっと、早く厳しく叱ってあげるべきだったのに。
人間達の自分の愚かさと同時に、自分の優しさもまた愚かだと思った。

300年スリープモードにしている間、別の世界から来たヒトたちが地球に降り立った時、我は目覚めた。
此処は人間が住む惑星であり、お主達が住む所ではないと主張したが、
奴等は地下空間に未だに眠る人間達を見つけた際、我の愛しの人間達を愚かだと言い放った。

この時初めて激怒し、全員この世界から追い出し、ついでにそのヒトたちが使っていた宇宙船をバグだらけにしてやった。
人間の事を愚かだと言う者は、我を愚かだと言う事と同じだ、人間の過ちを嗤う者は絶対に許さぬ。







だから我は、失った人の分まで生き、失った人の分まで楽しむ事にしよう。








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